「お父さんといると、いいことあるぞ!」

(増田)
妻は大学時代、国体に出るような元アスリートで、ベースがストイック。ツンは2歳だけど、ちょっとした山を自力で登って、降りてこられる。太ももはすでに発達してるし(笑)

妻の基本方針は「強い精神は強い肉体に宿る」。特に異論はないから日々の過ごし方は妻に任せてるし、自分が一緒の時も妻の希望に極力沿ってる。

ただ、ツンの「ボイコット」みたいに、その場で判断を迫られる場面では「こう育ってくれたら面白いなー」「妻は選ばないであろう、こんな選択肢を与えてみようかな」と思って、やらせてみて、夕飯の時とかに報告してる。

(伊豆田)
議論はしないの?妻は上司だから?

(増田)
この年代の子どもにとって、世界の中心は母親だと考えてる。うちのようにお母さんが専業主婦で、子どもと一緒にいる時間が長いのなら、なおさら。チョコレートをあげるかどうかといった些細なことは、妻と議論するレベルの話ではなく、父親として、自分が子どもの世界にちょっとだけでも影響力を持つために、お菓子で釣って、ポジションを得ようとしている感じ。

チョコレートについては、妻から真顔で「どうせ大きくなったら(味を)知るんだから、いまはあげないで、タマゴボーロとかにして!」と注意された。「はい」と謝って、以後はあげてない。ツンには「チョコはマジでNG出てるから、ラムネにしよう」と説明してるよ。

(伊豆田)
2歳のツンくんの世界の中では、増田は母親という存在に太刀打ちできないと知ってしまったのかな。奥さんに対する嫉妬心もにじんでない?

(増田)
家では「父親と母親で、育児へのスタンスの違いがあってもいいと思う。最終的に子どもを惑わさなければ」と話してる。でも、チョコレートをあげたり「お父さんといると、いいことあるぞ!」的な根っこにあるのは、嫉妬だよね…認めざるを得ない。

それでも、家庭の大きな決定事項、例えば、小学校は公立?私立?とか、節目のタイミングでどこに住む?とかは、妻は自分の言い分を聞いてくれると信じてる。

連載第1回で、わが家では昭和的な家族像がある程度成り立ってると話したけど、妻の実家でも「大きな決め事は、父親に最終決済を取る」といった“ルール”がおそらくあって、妻もそれを見て育ったと話していたので。

(伊豆田)
夫婦の関係、家族の形はいろいろだね。私は、夫からそんな亭主関白ぶりを発揮されたら息苦しくなってしまうだろうな。でも、増田と奥さんのやりとりを垣間見て、どんな関係、形であるにせよ、毎日の出来事を共有して対話を続けていきさえすれば、なんとかなる。夫婦間のスタンスの違いは変わらないかもしれないけど、違いを理解しながら家族全員ご機嫌に暮らす方法はある。そう、再確認したよ。
(つづく)

【プロフィール】
増田哲也:静岡県牧之原市生まれ。2005年静岡放送入社。社会部記者や編成、営業を経て、2022年から夕方ニュース番組「LIVEしずおか」編集長。2024年4月からバラエティーやドキュメンタリーを制作するディレクターに。アスリート、会社員を経て現在は専業主婦の妻、長男ツン(2)、次男タダチン(0)と4人暮らし。近所に頼れる親族はなく、長男の誕生以降、家事育児は妻が担ってきた。2024年4月の次男誕生をきっかけに約1か月半の育児休業を取得。

伊豆田有希:広島県福山市生まれ。静岡新聞などで18年間新聞記者。人事異動で2023年から静岡放送報道部の記者兼ディレクター。小学生の長男(11)、次男(8)、保育園児の長女(5)、メーカー勤務で遠距離通勤の夫と5人暮らし。2023年3月まで9年間、短時間勤務制度を利用した。次男と長女の誕生後はそれぞれ1か月ずつ夫も休みを取得。現在は夫が週2日在宅勤務。2週に1回は家事代行業に頼りながら、夫婦2人で家事育児を分担している。