「あなたのせいでめちゃくちゃ」
男とAさん双方の肉親に聞く。
6日。男の父親。
初公判から傍聴している。裁判長に呼ばれ、証言台の前に座った。耳が遠いと言い、声も張り上げるように話す。
【男の父親による情状】
「(息子は)正義感のある、思いやりのある、やさしい子です。
(息子は)12月に離婚が成立しました。
(母はすでに亡くなっていて、ほかに子どももいないので)親一人子一人です。
ずっと見守ってやろうと思います。
(息子は)反省していると思います。
(これから息子が)どこへ行くのか全然わかりませんが、行ける範囲なら行こうと思っています」
男、動かない。

10日。Aさんの母親。
初めての出廷。とても傍聴できない、という。確認できるのは声のみで、衝立のために姿は見えない。話し始めた途端、みるみる涙声に変わった。
【Aさんの母親の糾弾】
「本当に私の娘なのかと、(遺体となった)娘の顔は見れたものではありませんでした。痛かっただろう。苦しかっただろう。げんこつでも痛いのに、ハンマーで殴るなんて…
私たちは、『普通の暮らし』ができなくなってしまいました。
(娘の)葬式には友人や会社の人を呼べません。娘が悲惨な姿なので、身内だけでやりました。
あなたのせいでめちゃくちゃです。
孫たちの面倒を見なくてはいけないので仕事に行けず、これからの生活も不安です。
(叫ぶように)全部、あなたのせいです。
(孫たちの)母の代わりになるので、少しでも若く見えるよう、明るい髪にしています。きょう着ている服は、娘の服です。
あなたにはずっと刑務所にいてほしいです。
(息を整えて)孫たちは、あなたと会ったことがあるからです」
Aさんの母親、退出。
男、うつむき、ボーっとしていて動かない。