争点は「ストーカー規制法違反の成否」と「量刑」検察側・弁護側の冒頭陳述
冒頭陳述で検察側と弁護側は、
(1)事案の概要
(2)殺人事件までの経緯、当日の状況
(3)争点について主張した。
(1)事案の概要(検察側・冒頭陳述)
【ストーカー殺人事件】「元交際相手の川野さんに対してつきまとい等をしてはいけない旨の禁止命令を受けていた被告人が、禁止命令に違反して帰宅途中の川野さんを待ち伏せして、つきまといその直後に包丁で川野さんを殺害した」
【争点】「ストーカー規制法違反の成否」「量刑」
(2)殺人事件までの経緯、当日の状況(検察側・冒頭陳述)
・寺内被告と川野さんの関係
2020年10月ごろ~
【川野さん】人材派遣会社で平日勤務週末は会員制クラブでアルバイト
2021年12月ごろ~
【寺内被告】ショットバーで働き始める(川野さんが働く会員制クラブの系列店)
2022年4月ごろ~
【寺内被告】ショットバーに客と一緒に訪れた川野さんと知り合い、交際開始
交際開始~
【寺内被告】川野さんの浮気を疑うようになり束縛をはじめる
【川野さん】嫌気がさし交際解消を望むようになる
2022年10月
【寺内被告】川野さんのスマホを取り上げたり出勤を待ち伏せしたりする
【川野さん】警察に相談
【警察】寺内被告に対しストーカー規制法に基づく口頭警告
2022年11月10~21日
【寺内被告】川野さんを勤務先の会社で待ち伏せしたり、居酒屋で川野さんと話をして復縁を求める→川野さんに拒まれ会員制クラブに押し掛ける
2022年11月23日
【寺内被告】3回にわたり川野さんに電話(川野さんは着信拒否)川野さんに5通のLINEメッセージ「警察に何いうた」「何年かかっても恨んだる」「あんま舐めてると後悔すんぞわしはしつこいからの」など川野さんの職場に電話をかける
2022年11月26日
【川野さん】職場の従業員から伝え聞き警察に相談
【警察】寺内被告にストーカー規制法に基づく禁止命令
禁止命令~
【寺内被告】川野さんから2度にわたりストーカーとして被害申告されたことに立腹。川野さんに対するいらだちを募らせる。川野さんに会って文句を言い、謝罪させたい、川野さんの返答いかんによっては川野さんを殺すかもしれないなどと考える
2023年1月16日(殺人事件当日)
【寺内被告】手提げバッグに包丁を入れて自宅を出る
午後6時1分
【川野さん】勤務先を退社、家族に帰宅する旨のLINE送信
午後6時3分
【寺内被告】博多区の歩道上で約3分立ち止まって川野さんを待ち伏せ
午後6時6分
【寺内被告】帰宅途中の川野さんを発見し声をかける
午後6時6分~13分
【寺内被告】博多駅に向かっていた川野さんに約173メートル追従警察に被害申告したことに謝罪求める
【川野さん】「離して」「しつこい」「警察で話そう」などと告げる
午後6時13分
【寺内被告】殺意を持って、手提げバッグから包丁を取り出し、川野さんに対し包丁を振り下ろして右前胸部付近を突き刺し、その場に転倒させ、うつ伏せの川野さんに頭部、後頭部、背部等を少なくとも17回突き刺す
【川野さん】多数刺切創に基づく失血によりその場で死亡
【寺内被告】犯行に用いた包丁を手提げバッグに入れ、その場から逃走
(3)争点「ストーカー規制法違反の成否」と「量刑」(検察側・冒頭陳述)
・ストーカー規制法違反の成否
寺内被告が、川野さん殺害の直前に川野さんの職場近くの路上に立ち止まり、その後追従したことが「待ち伏せ」「つきまとい」に該当しストーカー規制法違反になるか?
弁護人は、寺内被告が川野さんと接触したのは偶然だったと主張するが、果たしてそうか?
川野さんと会えると予想、期待していたのではないか?
・量刑(寺内被告にどのような刑を科すべきか)
本件は、川野さんがストーカー規制法に基づき最大限の措置を執ったのに、寺内被告はそれを逆恨みして川野さんを殺害したものであり、川野さんはこれ以上どうすることもできなかったことや、法治国家に対する信頼を損ないかねない、法治国家に対する挑戦というべき重大な事件であることを特に注目すべき
これを前提として
・犯行態様の悪質性が極めて高い
・被害結果は極めて重大
・犯行動機に酌量すべき事情がなく、被告人の意思決定は厳しい非難に値する
などと主張した。