火鍋で飛行機を飛ばせ! SAF事業のスタート
「火鍋油がSAFになるとは全く考えていませんでした。2018年に航空分野におけるCO2排出削減のシンポジウムに出席し、そこで初めてSAFに着目したのです」
廃棄油や植物などを原料とするSAF(Sustainable Aviation Fuel=持続可能な航空燃料)は、既存の燃料に比べ、CO2の排出量を8割ほどを減らせるため「脱炭素の切り札」とも言われる。日本でも2030年までに航空燃料の10%をSAFに代替する目標が設定されるなど、各国がその導入を競い合っている。中国でも6月、国営放送が国産のSAFを使った中国国産機の飛行実験の成功を伝えるなど、国をあげて力を入れている分野だ。

四川金尚環保科技会社は、今はSAFの原料となる廃棄油をSAF先進国である欧米などに輸出する事業を行っているが、来年、SAF専用工場を建設し、廃棄油の調達からSAFの生産までを行う事業に本格参入する予定だ。
この挑戦について葉社長は
「世界には欧米など私たちよりも技術レベルの高い会社がたくさんあり、世界水準には到底及びません。まずは中国の西部の一位を目指すレベルです」

とあくまで謙虚。しかし、この会社ならではの強みがあるという。それは。
「私たち四川人は火鍋をたくさん食べるでしょう。だから私たちには原料調達の点で大きな強みがあるのです」

実はSAFを作るうえで一番の難題は原料となる「廃棄油の確保」。
四川金尚環保科技会社は現在も2000軒の火鍋店などから、毎日300〜400トンあまりの油を回収している。それをSAFの原料にすることができれば…。年間30万トン以上の食品廃棄油を排出する四川省にある企業だからこそ、今後のSAF事業拡大に向けた大きな優位性があるのだという。まさに火鍋大国四川ならではの強みだ。