SAFの課題、そして社長の夢とは
四川金尚環保科技会社には既に日本の航空会社や商社などからも問い合わせが相次ぎ、SAFの調達先としての注目度が高まっているという。
ただ、課題はその価格。SAFは既存の燃料の2倍~3倍というその「価格の高さ」が普及のネックになっている。これについて葉社長は。
「価格が高いという現状は一つのプロセスに過ぎません。世界でSAFを推し進める方針が明確になったいま、世界中の企業がSAFの価格低下に向けて努力することで、いずれ解決される問題でしょう」
と、自信を見せた。
2030年までに年間40万トン生産、という目標を掲げる葉社長。その後は四川だけではなく、新たな地域への生産拠点拡大も視野に入れているという。

「将来、世界中の観光客が私たちのSAFを使った飛行機で四川省に火鍋を食べにきたり、パンダを見に来る。そんな未来を描いています」
地元で愛されてきた火鍋。その油が世界の飛行機を飛ばす日がくるのだろうか。
取材後記
中国の食用廃棄油といえば「地溝油(地下油)」が思い浮かぶ人も多いのではないだろうか。2010年代はじめ、排水溝に流された使用済みの油を一部のレストランが調理に再利用していることが発覚し、大きな社会問題となった。
しかし、ここ10年あまりの中国の環境意識の高まりはすさまじい。今や14億人の食事から生まれる廃棄油を再利用する事業で、世界の注目を集める企業が生まれるまでになった。火鍋を愛する四川人の社長ならではの「火鍋油で飛行機を飛ばす」事業の発展から今後も目が離せない。
JNN北京支局 室谷陽太