世界遺産の「クライテリア=登録基準」 小笠原諸島では…

世界遺産は「顕著な普遍的価値」を持つものですが、それを具体的な基準にしたのがクライテリア=登録基準です。文化遺産は6つ、自然遺産は4つ、全部で10の登録基準があって、世界遺産になるためには1つ以上の基準を満たしていることが条件となります。つまり各国が世界遺産を推薦するときに、「この候補はこの登録基準に当てはまるので、世界遺産にふさわしい」とプレゼンする必要があるのです。

2011年に世界遺産に登録された「小笠原諸島」

たとえば、この2011年の世界遺産委員会では、日本の小笠原諸島が新たに登録されたのですが、登録基準9(独自の生態系)が認められて世界遺産になっています。島ごとに異なる環境で独自の進化を遂げた多くの固有種のカタツムリなど、その生態系が小笠原諸島の「他に類を見ない価値」だとプレゼンした結果でした。このようにどの基準を使って世界遺産に推薦するかで登録の可否も決まるので、各国も推薦するときに知恵を絞るのがここ。どんな定理を使って幾何の問題を解くのか…といった数学的作業と似ているところがあります。

小笠原諸島固有のカタツムリ

番組を担当するまでは「世界遺産はユネスコの人たちが適当に決めているのでは…」といういい加減なイメージを抱いていたのですが、初めて世界遺産委員会に来てみてビックリ。世界中から集まったメンバーがきわめて厳密、かつ科学的に審議して決めていたのです。

こんなふうに門外漢のときに初めて知った世界遺産の面白さ、鈴木亮平さんと作る特別企画で改めて伝えることができればと思っています。

執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太