仏教とヒンドゥー教が共存するネパールの象徴的な存在 少女の生き神・クマリ

ネパールの少女の生き神「クマリ」

ネパールには「クマリ」と呼ばれる少女の生き神がいます。クマリはネワール族という古くからこの地に住んでいる仏教徒の民族から選ばれ、初潮を迎えるまで生き神として人々の信仰の対象となります。クマリは額に「第三の目」のような印を付けているのですが、これはヒンドゥー教の神にあやかったものと考えられており、仏教とヒンドゥー教が共存するネパールの象徴的な存在ともいわれます。

世界遺産の「カトマンズのクマリの館」

また街や村ごとにクマリがいて、そのためかなりの数の「少女の生き神」が存在します。特に古都カトマンズのクマリは王制時代には「ロイヤル・クマリ」と呼ばれ、王も崇拝する特別な存在でした。今でもカトマンズの「クマリの館」と呼ばれる建物に住んでいて、これも世界遺産に登録されています。

2003年に取材したクマリの少女

番組は2003年に、そんなクマリのひとりを取材したのですが、当時は7歳。その12年後、2015年にカトマンズを撮影したときには、彼女は女子大生になっていました。15歳のときに生き神ではなくなり、人に戻ったとのこと。さらに9年後、今年2024年に撮影に行くと、彼女はクマリについてのスポークスマンみたいな存在になっていました。

2024年 インタビューに答える元クマリの女性

「私は神と人間、その両方を経験したんです」

と、スーツ姿で流暢にインタビューに答えた元クマリの彼女。クマリでいる間は人前で話したり歩いたりしないことになっているので、こんな風にハキハキ答える姿には時の流れを感じました。

ネワール族が作り出したレンガと木彫りの伝統建築

このクマリという伝統を生んだネワール族。カトマンズ盆地で世界遺産になっている伝統建築はレンガと木彫を組み合わせているのが特徴なのですが、それもネワール族が作りあげたスタイルです。

「世界遺産」という番組は、期せずしてネワール族の生んだふたつの文化、伝統建築とクマリの27年間の変化を映像で記録してきたのです。長く続いてきた番組ならでは・・・でしょうか。