クマの嫌う「ニオイ」

高い学習能力を持つクマに対し、どのような対策をとればいいのでしょうか?
キーワードは「におい」。クマは犬並みに優れた「嗅覚」をもっています。
秋田県立大学 木材高度加工研究所の野田龍准教授が行なった実験があります。
森の中にペンキを塗った木の杭を設置すると、クマは体をすりよせ、一心不乱に抱きしめたり、かじりついたりします。
「油性塗料」や「灯油」など好きな匂いに対して取る行動だといいます。
岩手大学農学部 山内貴義准教授:
(塗料や灯油などの)揮発性の匂いというのは普段嗅いだことのない匂いなので、クマだけではなく他の動物も興味を示してかじったりします。
一方、嫌いなにおいは「唐辛子」。
唐辛子の匂いのする丸太を与えたところ、首を振りながら離れてくしゃみをするような姿も。
さらに唐辛子の匂いのする木材を檻に設置した実験では、不快に思ったのか近づくことなく引き返していきました。
そのため、クマ撃退スプレーには唐辛子の成分が入っているものが多くあるのです。
コメンテーター 鎌田靖:
奥多摩にたまに行きますけど、クマよけスプレーをいつも持っています。
東京都でも目撃増加「行動が大胆に」

東京都観光局の2023年度の『ツキノワグマ目撃等マップ』を見ると、あきる野市を中心とした青梅市、八王子市などのエリアでの目撃情報が、わずか1年で非常に増えています。
駅やショッピングモール、市役所もあり、クマが市街地のあたりまで来ているのが分かります。
コメンテーター 伊藤聡子:
個体数自体も増えちゃってるということなんですか?それとも餌がなくて降りてきてるということなんですか?
岩手大学農学部 山内貴義准教授:
鹿やイノシシと違ってそれほど繁殖力は高くないので、数年でものすごく増えるということは多分ない。行動がかなり大胆になっているというのが正解だと思います。
さらに山内氏は、
「去年は山に餌が少なく多くのクマが市街地に現れたが、その個体が味をしめて、今後も市街地に行くようになる可能性もある」と指摘しています。
恵俊彰:
今年の方が増えますか?
岩手大学農学部 山内貴義准教授:
小グマが去年の秋に人里に出て、人里が自分の敷地内だと認識してしまうと、それが大人になって頻繁に出る可能性も十分考えられます。
繁殖期は6月、7月ぐらいがピークになります。これから始まるという感じになりますね。
弁護士 八代英輝:
今のクマは特に危険だと理解した方がいいですね。
(ひるおび 2024年5月22日放送より)
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<プロフィール>
山内貴義氏
岩手大学農学部准教授
専門は野生動物管理学
小学校で「クマの生態」を教え“ツキノワグマの先生”としても有名