「ガーンといくかもしれない」水深10メートル未満の浅瀬

輪島港のすぐ沖合は、元から水深が浅く、地震でさらに海底が隆起したため、漁業者が航行に不安を募らせます。地図で赤色に示された水深10メートルに満たない浅瀬を、慎重に計測していきます。

調査に協力する遊漁船「凪紗丸」の岩坂紀明船長(57)は、輪島港の外側で、以前は海中に沈んでいた岩場が海面に姿を現しているのを見つけます。

地震による隆起で海面にむき出しになった岩場=輪島沖、5月3日

「地震の前まではギリギリ通れた。今はもう2メートルくらい(隆起で)上がっていそうなので、ガーンといくかもしれない」(岩坂船長)

隆起した岩場を指す岩坂船長=輪島沖、5月3日

船から海面を見張りながら、浅瀬に乗り上げないように船を進めますが、この日はプランクトンなどで海水が濁り、海底がなかなか見えません。

菅教授と岩坂船長が、何度も水深を確認しながら、ギリギリの深さまで調査を続けます。

「(水深)7メートル?7メートルで底が見えないのかな。普通ならスーッと見えるはず」(岩坂船長)

遊漁船は、超音波の乱れや装置が壊れるのを防ぐため、5ノット前後(時速約9キロ)と非常にゆっくりとしたスピードで進みますが、浅瀬に気づいてから停船するまでに十数メートルかかるため、座礁の危険が伴います。

「(水深)6メートル!」(岩坂船長)
「もうやめよう、心臓に悪い」(菅教授)

1週間以上にわたる調査の中で、研究者と船長の連携も次第に深まっていきます。菅教授は「船長さんの地元の海に対する知識があって初めて調査が成功する。岩や定置網の場所、仕掛けの仕組みも分かっていないと装置で引っかけてしまう。非常に大事だ」と強調します。