360億円もの負債を抱え、山形屋が申請した「事業再生ADR」。この制度の特徴や山形屋再生へのカギについて、法律と経済の専門家に話を聞きました。

(照国総合事務所 湯ノ口穰代表弁護士)「山形屋は子どもの頃から母親に連れられ買い物に行く、思い入れのある百貨店」

企業の債権問題に詳しい湯ノ口穰弁護士です。高校時代、同級生とよく食べた山形屋やきそばの大ファンなだけに、今回のニュースには驚いたと振り返ります。

山形屋グループは去年12月、経営悪化を受けて「事業再生ADR」を申請。負債総額はおよそ360億円で、債権を持つメインバンクの鹿児島銀行を含めた17社の金融機関とともに再建を目指します。

耳にする機会の少ない「事業再生ADR」。過剰債務で悩む企業を素早く支援するために国が設けた制度です。

(照国総合事務所 湯ノ口穰代表弁護士)「債務を整理する場合、破産や清算など、事業を閉じるやり方もあるが、今回の事業再生ADRは事業を再建していく『再建型』の手続き」

お金を借りる企業・債務者と貸す側の債権者が行う再建手続きは、主に「法的整理」と「私的整理」に分けられます。

法的整理は、第三者の裁判所を通した手続きで、公平性が保たれるなどの利点があります。ただ、手続きは公表されるため、企業の価値が損なわれる可能性があります。

一方、「私的整理」は第三者を挟まず当事者同士で話し合うため、合意に至るかが不安定な側面もあります。ただし、手続きは非公表のまま事業を続けられます。

そこで、両者のメリットを融合させたのが「事業再生ADR」です。国の認定を受けた一般社団法人「事業再生実務家協会」が第三者として関与し、情報は非公表のため「事業を続けながら迅速な経営再建ができる」と言われています。

(照国総合事務所 湯ノ口穰代表弁護士)「地域で培ってきた信用は非常にカギになる。あとは経営者の判断も必要。さらに専門家のサポートも必要」

山形屋は債権を持つ金融機関に対し、5年間の事業再生計画を提示。今月28日に開かれる予定の債権者会議で金融機関の合意が得られれば、事業再生計画が実行に移されます。

計画には▼ホールディングス体制への移行▼鹿児島銀行などからの役員受け入れ▼ホールディングスの会長・社長の報酬全額カットなどが盛り込まれています。