一方、公費解体の本格化に向けては、申請する住民にとっても、さまざまな壁が立ちはだかっています。

地震で被害を受けた住宅などを、所有者に代わって自治体が取り壊す「公費解体」。申請の受け付けは大型連休の期間に本格化し、今月9日時点では、連休前の先月22日からおよそ4割増え、県内で1万2143棟の申請がありました。

しかし…。
記者リポート
「昨日から一般受け付けが始まった珠洲市。窓口には多くの人が詰めかけている一方、手続きの煩雑さから頭を悩ませる住民も多い」

手続きを行う住民たちを悩ませているのは、「未登記問題」です。
窓口で対応する職員
「お父さんが筆頭の戸籍で昭和32年以前の分が欲しいんです」
「ご兄弟は皆亡くなってらっしゃる?」
申請する住民
「そうそう」

職員
「兄弟のお子さんは?」
申請する住民
「赤ちゃんのうちに亡くなっとるわ」
職員
「それが分かるものがどれかなと思って」
申請する住民
「え~…」
建物の所有者が亡くなった後、その所有権が何代も移動されていなかったり、相続の権利を持つ人が1つの建物に複数いる場合は、原則、関係する人すべての同意が必要となります。しかし過疎化が著しい奥能登では、所有者の分からない空き家も多く、申請や審査に時間がかかっているといいます。

申請に来た住民
「全壊した建屋が(亡くなった)親の建屋で、本当に自分が相続権利者なんかということで。大変なのは、やっぱりこの手続き」

同意が必要なきょうだいが、全員、県外に住んでいるというケースも。大阪から来たという男性は兄弟4人分の同意書と印鑑証明が必要だったといいます。

「1回大阪に戻って、兄弟のもとを全部回って印鑑証明もらいまた帰ってきた。1回往復するのにガソリン代と高速で2万円はかかる。手続きは分かりづらい、やっぱ難しい」と話します。