南北123キロある世界最大の砂の島 島には湖も

オーストラリアの世界遺産「フレーザー島」

海流と砂がつくった驚くべき世界遺産。実はもうひとつあります。それがオーストラリアの東部にある自然遺産「フレーザー島」。ここは一見、緑豊かな普通の島に見えますが、表面の土壌の下は地下100メートルくらいまで砂・砂・砂。世界最大の砂でできた島で、南北123キロもあります。島には湖がたくさんあり、赤・青・緑と色鮮やかなものもあります。水はけのいい砂の島なのになぜ湖ができるのか・・・実は砂と枯れた植物が混ざって固まった岩のような層が地下にあり、そこは水をほとんど通さないのです。そのため砂の島にもかかわらず湖もあり、豊かな森もあるのです。

グレーター・ブルー・マウンテンズ地域の砂岩から生まれた砂が川と海流でフレーザー島まで運ばれた

このフレーザー島の砂は、オーストラリアの別の世界遺産「グレーター・ブルー・マウンテンズ地域」の砂岩に由来します。シドニーから内陸に入ったところにあり、標高1000メートルくらいの岩山が連なるグレーター・ブルー・マウンテンズ地域。谷にはユーカリの森があり、その葉の表面の油分が強い日差しを浴びると気化して、そのために谷が青くかすんで見えます。これが「大いなる青い山並み」と名付けられた所以です。ここの砂岩の断崖が浸食されて砂になり、それが川と海流によって運ばれてフレーザー島の位置に溜まり、50万年以上もかかって世界最大の砂の島を生んだのです。

ナミブ砂海もフレーザー島も、遠く離れた別の世界遺産から川や海流によって砂が運ばれて生まれた世界遺産。かたや広大な砂漠、かたや海に浮かぶ島ですが、その成り立ちには相通じるものがあったのです。

執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太