「2024年問題」バス業界に顕著な影響が出始めた

ダイヤ改正の背景にあるのは、4月から始まった運転手の時間外労働の規制強化です。

働き方改革に伴って労働基準法が改正され、運転手の1日の拘束時間の上限が従来より1時間減りました。さらに退社から翌日の出勤までのインターバル=休息時間が1時間延び、9時間以上に。

時間外労働の短縮につながる一方で、毎日約50人の運転手が出勤する備北バスでは、これまでと比べて50時間分の労働力を失った計算になります。

元々ぎりぎりの人数で運行していたため、5つの路線で1便ずつ減便せざるを得なくなったのです。

(備北バス営業部 木村尚紀部長)
「なにせ人がいない中では、現場の方では、やりくりは厳しい状況になっている」

こうした運転手不足の深刻化は「2024年問題」と呼ばれ、以前から懸念されていました。

就職しやすい環境を作ろうと備北バスではバスの運転に必要な大型2種免許を取得する費用の全額負担を謳うなどしてきましたが、それでも必要な人員は確保できていません。現状の賃金を改善できないのが大きな理由だと政森社長は話します。

(備北バス 政森毅社長)
「賃金をあげれば、集まってくる可能性もあるんですけど、うちばっかりじゃなしによそも赤字路線なんですよ。人が乗らないということで。赤字路線ですから賃金も限られるんです」

バス利用者は30年で半減 給与の上げようもなく...

全産業の平均より2割ほど低いとされる、バスの運転手の賃金。背景にあるのは営業赤字です。

人口減少などによりバスの利用者はこの30年で半減、備北バスでも路線の9割以上が赤字で、自治体などからの補助金なしには経営が成り立たない状態だといいます。このため、賃金を上げることもできません。

こうした中でバス路線の維持に追い打ちをかける2024年問題。政森社長は、業界は崖っぷちに立たされていると訴えます。

(備北バス 政森毅社長)
「どこのバス事業者も、これが2年3年続くと、廃止にするところとか、廃業にするところが出てきます。このまま何もしなかったら難しいです。経営事態が」

専門家は訴える バス路線守るために「国のサポートが必要な時期」

ではどうすればバス路線を守っていけるのか。公共交通に詳しい岡山大学の橋本教授は、国が積極的にサポートする仕組みが必要な時期にきていると指摘します。

(公共交通に詳しい岡山大学 橋本成仁教授)
「公が関わらざるをえなくなっている時期ですよね。運転手の給与水準をどう維持していくのか、維持ではダメで向上させていくのか、こういうようなところにまでにも公的な資金を投入するのかしないのか、そういう議論が必要になっている」

「もちろん国も含めてです」

その上でバス路線を維持するために必要なのは、バスを利用しない人たちの合意だといいます。

(公共交通に詳しい岡山大学 橋本成仁教授)
「私は公共交通を使わないから、という人がたくさんいて、そういう方たちの税金を投入していいのか、社会的な合意形成が必要になってくると思うんです」

「いったい自分たちの社会にどれぐらいの選択肢を残しておくのか、ここの議論が社会に求められているところだと思いますね」

(スタジオ)
(坂井亮太キャスター)
日本バス協会によりますと、2030年には路線維持のための人数が3.6万人不足すると言われています。ますますバス業界、厳しい状況になってきています。

(コメンテーター 春川正明さん)
運輸総合研究所が去年、地域交通産業についての提言を出しました。その中で、「地域交通は非常に大事な地域の基盤、ただ一方で、民間企業は経営が苦しくなってきている、民間企業主導では限界にきている」と書いています。

その中でどうするかというと、ヨーロッパではやっているんですけれど、地方自治体が中心となって地域の交通全体を考えての方向へ舵を切らないとだめなときにきているんじゃないかと言っているので、そこを考えるときに来てますよね。

(坂井亮太キャスター)若い人も高齢者になったときにどうするのか、社会全体で考える時期が来ています。