「LOST」を開発したきっかけとは
「LOST」は公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会や国立精神・神経医療センター、筑波大学、株式会社NTTデータなどが共同で2016年から研究を始め2年間かけて開発されました。
それまで同じような依存症の指標がなかったわけではなく、SOGS(サウス・オークス・ギャンブル・スクリーニング)と呼ばれる 同様のテストがありました。
ただしそれは設問数が多かったり複雑だったり、かなり専門的で、誰でも使えるわかりやすい形式ではありませんでした。
「LOST」はその難点を見直し、シンプルなテストになっています。開発に携わった公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子さんに、このテストを開発するきっかけを聞きました。

公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子さん
「いちばん使われてる『SOGS』というテストは、比較対象群がギャンブル依存者対一般人なんですよ。私たちはギャンブル依存症のツールはギャンブルをやる人を比較対象群に持ってこないと正確なもの、使えるものにならないんじゃないかと思ったんです。
ギャンブルを生活が脅かされるほどハマることなく楽しめている愛好家とギャンブル依存症の比較がこの研究であり、そこから生まれたのが『LOST』です。ギャンブル愛好家の人とギャンブル依存症の人たちの差は何なのかと研究をしていったら明確な差、有意差が出てきたので、スクリーニングテストにしたら非常に使いやすいんじゃないかって。
『これがギャンブル依存症者特有の考え方なんだ』っていうものが分かると、相談の電話があって話したときにも『そのように考えているということは、ギャンブル依存症だよね』と話をすると『そうです、そのとおりです』となるんです。当事者の共感が非常にあって、私たちも介入しやすい。非常に使いやすいというのはありますね」
今ではスマートフォンなどを使って気軽に公営ギャンブルの投票や違法なオンラインカジノなどができるため、依存症になってしまう人も急速に増えているといわれます。田中代表は次のような危機感を話していました。
公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子さん
「コロナ禍以降、オンラインのギャンブルというのが身近になっていて、若年化していて問題が広がっているなっていう風に思いますね。コロナが流行していた時には友達とも会えなかったし、退屈な時間に何しようってなった時にギャンブルをちょっとやってみて、ハマってしまったっていうような。
アルコールや薬物と違うのは、やはり国がやっている産業、公営ギャンブルによって被害を出していることなので、それに対して国や自治体が啓発や予防教育に力をいれていただきたいと思ってます。今後、統合型リゾート、IRという形でカジノの開業も予定されていることですし、きちんと国が知識と啓発に取り組むべきだと思ってます」
自分や家族、知人などがギャンブルにのめり込んでいると思う場合、まずは「LOST」でテストをしてみて下さい。そしてギャンブル依存症が疑われる場合、すぐに相談窓口や治療機関に連絡して下さい。ギャンブル依存症は適切な治療や正しい支援につながれば、回復可能な病気です。
ギャンブル依存症に関する相談は、各地域の精神保健福祉センターや、さきほどのギャンブル依存症問題を考える会などで受けつけています。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当・藤木TDC)