そのため、今後ますます、閉鎖される事業者が増えると予想する専門家もいます。
北海道ホームヘルプサービス協議会 斉藤俊子 副会長
「当たり前に、介護保険料を支払って、本来、いろいろなことを選択できるはずなのに、現状では選択もできないし、希望のサービスを受けることができないのは大変だと思う」
さらに今回の事業所閉鎖に伴い、深刻な事態も…。
北海道ホームヘルプサービス協議会 斉藤俊子 副会長
「福祉サービスが少ないことで、不安で倶知安町から転出するかたも実際にいる」
この状況を倶知安町は、どの様に考えているのでしょうか?
倶知安町 宮崎雄一 副町長
「この度の事業所の閉鎖は、町としても非常に残念な思いがある」
突然決まった、今回の訪問介護事業所の閉鎖に、倶知安町も危機感を募らせていると、副町長は話します。
倶知安町 宮崎雄一 副町長
「介護や障害者の福祉サービスというのは、地域生活のためには不可欠。この様なことが起こらないように、できることから取り組んでいきたい」
昨年度から倶知安町では、介護福祉に関する資格の取得や研修に補助金を出したり、 アルバイトのマッチングサービス会社と連携し、 町内の人手不足の解消に努めたりしていますが、 具体的な効果が現れていないのが現状です。
もちろん、この社会福祉施設の破綻は、倶知安町だけの話ではありません。
北星学園大学社会福祉学部 安部雅仁 教授
「倶知安と近いような現象が生じ始めているので、全国的に広がる大きな問題だと思っている」
社会福祉の専門家は、警鐘を鳴らします。
北星学園大学社会福祉学部 安部雅仁 教授
「いま、国の施策として賃金を上げようと、その中で介護報酬点数、とりわけ訪問介護の報酬点数下げたので、確実にホテル・観光業・飲食業に流れてしまう」

厚生労働省は、2025年には介護職が32万人不足。2040年には69万人が不足すると予想しています。一方で2022年は、新規就労者よりも退職者が多く、初めて減少に転じました。

その大きな原因となっているのが、介護職の賃金の安さ。全産業平均と比べると月7万円近くも少ないのです。
北星学園大学社会福祉学部 安部雅仁 教授
「いまのままだと何が起きるのか…というと、介護保険料を払うだけ払って、もしかしたら自分が介護が必要になった場合に、十分なサービスが受けられるかという問題にも発展すると思う」

北星学園大学の安部教授は、インバウンド需要などで経済が活性化した、倶知安町のような自治体では増えた税金の一部を使って、介護職の賃金アップに充てるなど、そうした対策が必要ではないかと指摘しています。
国や自治体の財源が限られている中、簡単に解決できる課題ではないと理解しつつも、 介護保険料を払っていながら、サービスは受けられないという事態は避けたいものです。