輪島市の高校では、8日入学式に合わせ弦楽器のコンサートが開かれました。
演奏に使われたのは地震で倒壊した工房から見つかった輪島塗の弦楽器です。職人たちの再起への思いを乗せた復興の音色が響きました。

輪島高校の入学式で披露された演奏。4月に金沢で開かれる音楽祭の実行委員会が企画した慰問コンサートです。プロの奏者らが奏でるのは輪島塗の弦楽器です。
八井貴啓社長「この部屋にあるっていうので…これと同じような大きい柱が邪魔して奥に行けなかった。仕方ないからここの壁ぶち破ろうということになってそこから(出した)」

輪島市横地町の大徹八井漆器工房。元日の地震で工房は全壊しましたが、およそ1か月後、瓦礫の中から輪島塗のバイオリンとチェロを発見。

3月には別のバイオリンとヴィオラが見つかりました。
八井汎親さん「いやぁよくまあ無事に見つかったと思いますよ。これだけめちゃくちゃになった中にひとつも傷んだところや傷ついたところはありませんし、何かやっぱりこれを使って大震災の中でみなさんに元気をつけられるようにという感じで見つかったんじゃないですかね」
前社長の八井汎親さん・86歳。
15年前、仕事で訪れたパリでバイオリンの音色に惹かれ、ニスを塗る代わりに漆を施す技術を考案。楽器作りに協力してくれる業者がなかなか見つからず、試作品を持って全国を回りました。
八井汎親さん「漆を塗ったらものすごく重くなって音が出ないと思っていたけどこんなに薄く塗る技術があるならやってみるかということで、何回も何回も(業者の元に)行ってやってくれやってくれと。『(最終的に)大徹さんの熱意に負けた』と」
試行錯誤を重ね、熱意で完成させた漆塗りの弦楽器。これまでにバイオリン、チェロ、ヴィオラあわせて20丁に漆を施し、演奏家によるコンサートなどで披露されてきました。
八井汎親さん(2016年のインタビュー)「ニスと違って漆は透明度が高いから深い神秘的な色が出ている。この良い音が全世界に広がっていくんじゃないかと思っている」
奇跡的に被災を免れ、故郷に響いた復興の音色。
八井さんは輪島塗を次の世代につなげていくため、前を向き続けたいと話します。
八井汎親さん「俺の代で終わりかなと思いましたね、それでも何とか再建して繋いでいかないと。この歴史ってぼくが始めたわけではなくて、400年も先の先人たちが広げてきた文化ですからね。絶対僕らはこれくらいの震災で負けてやめたではなくて絶対につないでいく必要があると思っている」