公示地価2.3%上昇 半導体・訪日客も追い風に!?

半導体工場ができた熊本県・菊陽町(30.8%)と、関連企業が進出した隣の大津町(33.2%)が商業地の前年比上昇率のワンツー・フィニッシュだった。また、次世代半導体の国産化を目指すラピダスが工場を建設中の北海道・千歳市も商業地(30.3%)、住宅地(23.4%)の上位を占めた。

日本不動産研究所 シニア不動産エコノミスト 吉野薫氏:
工場が立地することによって、そこで働く人の雇用が生まれ、住環境を整えるためのサービス産業が生まれ、半導体に関連する連関する産業が立地するという、様々な経済活動が新しく生み出される。そのことによって土地の使い勝手が良くなるという形で、土地の価格が上昇する。これまでになかった需要が生み出されることが重要。

インバウンドの復活も地価の上昇を支えている。東京・台東区の浅草エリアは17.8%上昇し、コロナ前の価格を超えた。北海道では国際的なリゾート地となったニセコを抑えて、富良野が全国トップの27.9%を記録。ニセコよりも割安なことから、ホテルや賃貸型リゾートマンションの建設計画が相次いでいる。

岩手県盛岡市も上昇した。2023年、ニューヨーク・タイムズが「行くべき52か所」の1つに選んだことで、観光客が押し寄せた。

交通インフラ整備が進んだ地域も上昇が目立った。2023年8月に開業した宇都宮ライトレール沿線は利便性の向上と好調な住宅需要から住宅地が7.5%上昇。さらに、3月に延伸した北陸新幹線沿線では、再開発が進んだ福井駅周辺(8.3%)・敦賀駅周辺(2.1%)がそれぞれ上昇した。福井県の商業地は平均で0.2%上昇し、32年ぶりのプラスとなった。地価の上昇が地方に波及している。

公示地価2.3%上昇 半導体・訪日客が追い風に!?

――コロナ禍で、特定のところばかり上下することは解消したのか?

日本不動産研究所 シニア不動産エコノミスト 吉野薫氏:
コロナ禍による不透明性は後退して、それ以前の地価の上昇の足取りがまた戻ってきた。

全用途の全国平均は去年と比べて2.3%上昇。伸び率はバブル期以来33年ぶりの高さとなった。また用途別では、住宅地が2.0%、商業地が3.1%それぞれ上昇している。3大都市圏(東京・大阪・名古屋)はもちろん高い伸び率だが、地方4市(札幌・仙台・広島・福岡)も上昇率が高い。

――今回の地価上昇の特徴は?

日本不動産研究所 シニア不動産エコノミスト 吉野薫氏:
3大都市圏を初めとする大都市圏で、地価の上昇がはっきりしていることは言うに及ばず。それ以外のエリアにも、地価の上昇ポイントが広がっているということは、今回の地価上昇局面の特徴だと捉えている。

――全用途の全国平均が2.3%はバブル期以来。株価もバブル超え。不動産価格もバブルの傷が完全に癒えて戻ったのか。

日本不動産研究所 シニア不動産エコノミスト 吉野薫氏:
不動産はまだバブル時代ほどには行ってないと思う。バブルの頃は、年によっては全国平均で2割上昇するような年もあった。それに比べると、まだこの地価の上昇というのは緩やか・穏当なもの。バブル的ではないと思っている。

半導体特需でTSMCの熊本工場に近い大津町は、商業地の上昇率で全国トップとなった。新幹線開通で再開発が進んだことから、石川県・福井県も上昇している。またインバウンド需要の回復で北海道では富良野の上昇が際立っている。

――キーワードは半導体、インバウンド、そして新駅新線か?

日本不動産研究所 シニア不動産エコノミスト 吉野薫氏:
半導体については、地価公示の大きなキーワード。インバウンドやインフラ整備はコロナ禍以前の地価上昇局面でも意識されていた要因だ。

――どういう意味から?

日本不動産研究所 シニア不動産エコノミスト 吉野薫氏:
これまでになかった経済活動が生み出されることによって、その土地の使用価値が高まっていることが、地価の上昇に繋がっている。

――土地の利用、収益が上がるきっかけを作るプロジェクトが非常に大事。

日本不動産研究所 シニア不動産エコノミスト 吉野薫氏:
マクロ経済政策は当然、地価の上昇を支える前提条件としては重要だが、地価を引き上げるのはその土地でどんな経済活動が繰り広げられるかに尽きる。

しかし一方で、全国的に上がっているかという点はバブル期とは違う。都道府県別で見ると地価が下落しているエリアがある。

――四国や山陰、新潟、北関東はどちらもマイナス。

日本不動産研究所 シニア不動産エコノミスト 吉野薫氏:
県庁所在地レベルでは地価の底入れが広がってきているが、経済活動が盛り上がってこないエリアを多く抱えているような県については、平均でならすとまだマイナスが続いている。

――札幌・仙台・広島・福岡の主要4市を除く地方は上昇した地点が41%で、下落した時点が40%なので、半分半分。人口減少時代だから仕方がないことか?

日本不動産研究所 シニア不動産エコノミスト 吉野薫氏:
人口減少する中で全国が等しく上昇していくというシナリオは考えづらい。まさに人口減少社会は、地価の二極化を引き起こす。

――二極化はもっと進んでいく?

日本不動産研究所 シニア不動産エコノミスト 吉野薫氏:
金融緩和が縮小する中で、二極化の動きはより助長される可能性が高いと思う。

(BS-TBS『Bizスクエア』 3月30日放送より)