SDGs、17の目標のひとつ「住み続けられるまちづくりを」について、考えます。世界の居住環境の向上に取り組む「国際連合人間居住計画」(国連ハビタット)の事務局長に、気候変動やコロナ収束後を見据えたまちづくりについて聞きました。

◆市長から国連機関の事務局長に


国連ハビタットのマイムナ・モハメッド・シャリフ事務局長です。27日まで福岡市で開かれた「アジア太平洋都市サミット」に出席しました。シャリフ氏は都市計画の専門家で、マレーシア・ペナン島市の市長を経て2018年に国連ハビタットの事務局長に就任しました。


シャリフ事務局長「国連ハビタットは、日本政府そして福岡と協力しながら、ケニアやエチオピア、ミャンマーなど数え切れない国に技術協力を行ってきました。今後は技術だけでなく、管理やマネージメントといったオペレーションの部分を含めて全世界に広げていきたいと思っています」

◆「国連ハビタット」とは?

国連ハビタットは開発途上国の居住環境の改善やまちづくりに取り組む組織です。「福岡方式」と呼ばれる廃棄物の埋め立て技術や、福岡市の企業が開発した雨水(あまみず)を溜める地下タンクは、国連ハビタットに採用され、東南アジアやアフリカで役立てられています。



(Q.キーワードは?)
「ベター クオリティ オブ ライフ」

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るうなか、シャリフ事務局長は「住み続けられるまちづくり」という目標を達成するためには、「生活の質」の改善が欠かせないと話します。

シャリフ事務局長「スラムなど貧困層が新型コロナによって最も苦しい生活を強いられています。『生活の質』を改善し、都市のあり方を見直さなければ、持続可能な世界を築くことは難しいと考えています」

◆世界初の「海に浮かぶ街」

一方、気候変動への対策も喫緊の課題です。国連ハビタットは、現在、韓国・釜山で世界初のプロジェクトを進めています。

「フローティング・シティ」。このプロジェクトは、海面上昇や洪水などの気候変動対策として、海に浮かぶ「海上都市」を建設しようというもので、2025年までにプロトタイプを釜山市に完成させる計画です。ソーラーパネルで電力をまかなうほか、水や食料も自給自足できる都市を目指しています。


シャリフ事務局長「多くの国が、気候変動による海水面の上昇という大きな問題に直面しています。海面が上昇しても安全性を確保できるまちづくりを、釜山市と協力して行っていますが、この実証実験を成功させ、より多くの国に広めて行ければと思っています」