シリーズ「ふるさと新時代」、20年前の「平成の大合併」で、ふるさとはどう変わったのか見つめます。3回目は「日置市東市来町」です。
東市来町は2005年に、伊集院町・日吉町・吹上町が合併して日置市になりました。人口の減少が進む中、温泉地に魅せられて市外から移転してきた企業が中心となって、街ににぎわいを取り戻そうという取り組みが今、始まっています。
400年以上の歴史があるとされる、日置市東市来町・湯之元の温泉街です。古くから地域に親しまれてきた温泉街で今月、あるイベントが開かれました。
業種を超えた新たなつながりを作り、地域を盛り上げようというイベントで、市内外の飲食や美容関係などおよそ60人が参加しました。
(美容関係)「目標に向かって頑張っている人を見ると、私も頑張ろう、やったろうという気持ちになる」
(飲食業)「間違いなく盛り上がってくる未来が見える。そこに私も参加したい」
会場となったのは、今月、鹿児島市から東市来町に本社を移転した企業のオフィスです。社員数は75人で、エネルギーやIT事業を手がけています。
(小平さん)「個人のやりたいことを共有し、開かれたオフィスにして企業と地域の境目をなくしたい」
社長の小平勘太さん、44歳。鹿児島市から、5年前に日置市に移り住みました。
小平さんの祖父は湯之元地区でかつて衣料品店を営み、温泉や商店が並んでにぎやかだった思い出の地で新しいスタートを切りました。
国内外に14の事業所を展開する小平さん。社員はリモートワークを活用することで、湯之元の新しい本社や事業所など、好きな場所で自由に働くことができます。
湯之元の本社は、社内外のイベント会場として使うことができ、「人と地域をつなぐ場」にもなっています。
(小平さん)「社会に対する貢献・責任を果たすような企業のあり方が今後求められると思う。(日置には)いろいろな人がいるので、そういった人たちと企業が触れ合うことによって、新しいことをより生み出せるのでは」
この日、鹿児島市内で勤務する社員は本社の移転をどう思っているのか、聞いてみました。
「驚きが一番、意外過ぎて」
「これから開拓する意味ではおもしろい。本社に出社して街中を歩いていると、気軽にあいさつしてくれて癒される場所」
2005年に誕生した日置市。現在の人口はおよそ4万6400人で、合併した年に比べ7000人ほど減少しました。ただ、転入者の数は3年前から転出者を上回っています。
背景の1つと考えられるのが、日置市内への企業の本社移転や新設です。合併以降、市が把握しているだけで、昨年度までに19社が市内で事業をスタート。
鹿児島市に近い利便性や、自然の豊かな環境で働けることに魅力を感じる企業が多いということで、旧東市来町への移転は、小平さんが初めてです。
小平さんが会社を移転した旧東市来町の温泉地「湯之元温泉」は、合併した19年前は1万1500人以上の宿泊客がいましたが、去年は1750人にまで減少しました。
小平さんも週4回ほど通うという湯之元温泉。
湯之元で生まれ、温泉施設の管理人を務める原田菊生さん(73)です。
(小平さん)「原田さんは町の大先輩で、生き字引のような人」
(原田さん)「ホテルも2つ、料亭、飲食店、映画館、遊戯施設もあった。通りを通れば、上の方から音が降ってくるようだった。三味線の音や太鼓の音、芸者の声が聞こえて、賑やかな街だった。当時を知っていれば寂しくなったなと思う」
小平さんは温泉地の将来を見据えて、IT技術を使った電子決済システムの導入の提案や、温泉施設にすでにあるコワーキングスペースを活用し、湯之元を訪れる人を増やす活動も進めています。
(原田さん)「(移転について)最初はどうしてなのかと思ったが、湯之元の町のポテンシャルを、先を見る目があるのかなと。一緒に湯之元の発展のためにいけたらと思う」
そして、かつて町の人に親しまれた祖父の衣料品店の跡地には、飲食店や雑貨店などが日替わりで無料で出店できる「シェアカフェ」を作りました。
(出店者)「利益よりも、自分たちも楽しめて地域の人にも喜んでもらえたらという思いでやっている」
湯之元地区の中と外をつなぐハブになりたい、親しんだ温泉街を盛り上げる小平さんの活動は始まったばかりです。
(小平さん)「なかなか大きい企業では真似ができないこと。チャレンジしたい若者が集まってきたり、海外の人がたくさん来たりするような、新しいことが生まれるような町にしたい」
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