■ネット掲示板に“犯行予告”

井上貴博キャスター:
あの事件をきっかけにして、秋葉原のみならず様々な場所で防犯カメラの台数も増えましたし、大きな転機になった事件と言えますね。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
当時の政権は福田内閣という時代で、この事件に非常に衝撃を受けていたのを覚えています。もちろん絶対に許されない犯罪ですが、犯行の背景にあるネットの掲示板の問題や派遣労働の話とかが議論されたのを覚えてます。しかし、残念ながら居場所がないという問題はいまだに解決してない感じがしますね。

井上キャスター:
家庭環境もすさまじかったと後々分かってきましたもんね。

ホランキャスター:
背景の部分を見ていきましょう。事件の動機について、当時加藤死刑囚は静岡県の自動車工場で派遣社員として勤務していました。しかし、職場のロッカーから作業服がなくなったとか存在価値を認められていないと感じ、腹が立ったなどと話していたのです。現実世界で居場所がなく居場所を求めたのは、携帯サイトの掲示板だったのです。自分の悩みなどを携帯サイトの掲示板に書き込んでいたのですが、そのうちに、“あらし”や“なりすまし”と呼ばれる人たちに嫌がらせを受けたと裁判で証言しています。

こういったこともあり、加藤死刑囚は「掲示板は、“帰る場所”といってもいい(存在)」「“あらし”や“なりすまし”に怒っていることを知ってほしかった」だから事件を起こしたというような趣旨の供述を行っています。ネット掲示板に“犯行予告”を書き込みまして、実際に事件を起こしたということです。この事件は、社会に与えた影響も非常に大きかったです。当時、秋葉原の中央通りは歩行者天国が行われていましたが、この事件を受けて約2年半中止となりました。この中止の期間中に防犯カメラを増やすなどして安全を確保した上で、2011年に再開されたということです。

さらに、犯行に使われたダガーナイフなど刃渡り5.5センチ以上の両刃の刃物が、2009年1月の改正銃刀法で所持が禁止となりました。しかし、こういった衝撃的な事件があると模倣犯の増加が出てくるんです。これを受けて、インターネット上に殺人などの犯行予告が相次ぎ、警察が取り締まり強化したなどという背景もあるようです。

今回死刑が執行されたことについて、当時捜査にあたった警察幹部は「遺族にとっては、14年は長かったと思う」と話しています。

井上キャスター:
法律上は死刑判決が確定してから、原則としては6ヶ月以内に刑を執行すると定められています。一方で、実際はそれよりも長い時間がかかります。今回のケースでいうと、刑が確定してから刑執行まで7年半ほどとなります。このあたりはどう受けとめますか?

TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
実際に、死刑囚に対して刑が執行されてない死刑囚が100人を超えてるわけですから、議論はあると思いますが、死刑に至った経緯がありますので、そこは政治の判断が問われるところだと思います。ただ死刑のあり方自体は、もう少し根本的に考える必要があると思います。死刑を先延ばしにしていればいいという問題でもないので、そこは恣意的に運用していいのかという議論がありますから、きちんと制度上担保していく必要があると思いますね。

井上キャスター:
まさにその部分冤罪のケースもありますので、もちろん一概には言えないと思いますが、大臣によって考え方も変わりますし、どういった経緯で、なぜ今行われたのかという情報開示をもう少しという声もありますね。

TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
大臣によっては自分の任期中は死刑執行しなかった大臣もいますし、積極的に死刑を執行する人もいるところが、人によって恣意的に運用されていいのかもあります。何か1つのルールが必要になってくると思いますね。