指揮者の思い描く世界と、オーケストラの1人ひとりがやりたい音楽、出したい音色を擦り合わせて、1つの曲を壮大に作り上げていく…その過程の「中心」にいることができ、かつ自分の音楽も示していけるところがコンマス最大の魅力です。
ステージの前で演奏するのも後ろで演奏するのも、さほど重要ではありません。オーケストラとは、それぞれの奏者が思う音楽を聴いて、見て、ぶつかり合う「大きな室内楽」だからです。
それよりも、団員との普段の会話であったり、彼らが演奏する姿を見たり、たくさんコミュニケーションを取ることがよりいい音楽を作る上で重要なのです。
私も、オーケストラの「今」を敏感に察知し、「今回の演奏はどうしましょうか?」と、フレキシブルに指揮者に提案して、他の奏者との窓口になれるコンサートマスターであり続けたいと思っています。
コンマスとは、指揮者と奏者の間に入り、指揮者の音楽の方向性をサポートする超重要なポジションだということが理解できた。
コンサートマスターとしてオーケストラの中心にいながら、身長が低いため、後ろの奏者から見えないこともあると笑いながら話す会田氏。姿が見えるかどうかは関係なく、演奏や人柄で全員をリードし存在感を示すことができる人物が選ばれるということだろう。
ドラマを配信で観返す際には、近藤の奏でる音色や気配りに注目してみるのもいいだろう。そんなコンマスの魅力を知れば、近藤の妻・洋子(LiLiCo)も、娘の心(おじゃす)も、家長を見直してくれるのではないだろうか。

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会田 莉凡(あいだ りぼん)
桐朋女子高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコース在籍中に、「第81回日本音楽コンクール」第1位、併せて全部門で最も印象的だった演奏に贈られる増沢賞、レウカディア賞、黒柳賞、鷲見賞を受賞。「第6回ルーマニア国際音楽コンクール」全部門グランプリ。翌年にルーマニアの4都市にてリサイタルツアーを行う。「秋吉台音楽コンクール」室内楽部門(2014年)、弦楽器部門(2018年)にてそれぞれ第1位。ほか多数優勝、入賞。これまでルーマニア国立放送管、東響、東京フィル、東京シティフィル、札響、群響、九響をはじめ日本各地のオーケストラと共演。小澤征爾氏指揮のもと、ソリストやコンサートマスターを務める。小澤征爾、原田禎夫、川本嘉子、ジュリアン・ズルマンの各氏に師事。これまでに岩澤麻子、鷲見健彰、徳永二男の各氏に室内楽を師事。東京音楽大学指揮科特別アドバイザー。現在、京都市交響楽団特別客演コンサートマスター、札幌交響楽団コンサートマスターを兼任。