TBSで放送中の『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』。この中で、津田寛治さんが演じる近藤益夫が担当していたポジションが「コンサートマスター」だ。通称「コンマス」。今回はそんなコンマスの仕事内容や魅力を、東京音楽大学指揮科特別アドバイザーであり、本作で使用されている音楽の収録にも携わった会田莉凡氏に聞いた。
コンマスは指揮者と奏者の中間管理職!?
――コンサートマスターとはどのようなお仕事でしょうか?
オーケストラにおいて、コンサートマスターは第1バイオリンの首席奏者(リーダー)が担うケースが多いです。各奏者を統率し、指揮者の「今回はこのような音楽づくりをしましょう」という意図をいち早く汲み取って各奏者に共有するなど、指揮者ひとりでは指示し切れない部分をカバーする重要な役割を担っています。
時には、100人以上にもなるオーケストラのメンバーに対して、その全員が一番良い音色を出せるような方向性を指揮者の代わりに示さなければなりません。指揮者が意図を示したとしても、実際に音を出すのは奏者なので、その間に入るわけです。

また、バイオリンのような弦楽器は瞬発的に音を出すこともできますが、管楽器は必ず息を吸い、それを吐いて音を出すので、そもそも弦楽器と音の出るタイミングが異なります。楽器の種類によって身体の使い方もさまざまなので、そうしたことも計算しながら、全体がまとまるようにリードしていくのです。
指揮者の手や棒の動きから指揮者のやりたい音楽を汲み取り、全員が一番自然に心から音楽ができるような呼吸はどこだろうと演奏中は常に探っています。
――コンサートマスターになるにはどのような経験が必要なのでしょうか?
演奏家としてある程度のレベルまで達し、コンサートマスターを志望するバイオリストが、全国各地のオーケストラにまず客演(ゲスト)のコンマスとして参加する、というところからスタートします。
そして何度も共演を重ねながら、そのオケ特有の音楽づくりや楽団員同士の相性を、より理解した上で演奏を導いていくことができる方が、正式なコンマスとして選ばれるというケースが多いですね。
津田さんが演じる近藤さんは40年も晴見フィルに在籍し、コンマスになっています。かなりのご苦労があったと思いますが、その情熱に感服します。

――コンマスの最大の魅力をお聞かせください。