「最大の失策」 人手不足も訪問介護報酬引き下げ

藤森キャスター:
結城教授は国の政策が「最大の失策」と指摘しています。それは訪問介護事業者の基本報酬の減額です。
介護の全サービスの平均利益率が2.4%に対し、訪問介護事業は利益率が7.8%となっているため、国は十分黒字だということで減額としました。ところが厚労省が新たに調査をしたところ、訪問介護事業所のうち36.7%が赤字経営ということが判明しました。なぜこのようなことになるのでしょうか。

結城教授:
大きな訪問介護事業所は組織化されているので、収益が良いのですが、地域密着の小規模事業所は大変な状況です。国はそこをきちんと分けて、介護報酬を決めないといけなかった。雑だったというのが原因だと思います。
ただ厚生労働省の言い分としては、介護報酬は、介護事業所に入る収入と、介護職員が貰う賃金は分けている、賃金の部分は上げているので事業所全体で頑張ってくださいということなんです。
しかし、小さい事業所の場合、赤字だと研修費用が出せない、人事管理もできない、リクルート活動もできない。そうすると、いくら賃金を上げても、事業所の体力がないと赤字経営で閉所してしまう事態が起きてしまうと思います。

藤森キャスター:
北海道・倶知安町の介護事業所「ホームヘルプステーション」の斉藤俊子さんは「基本報酬の引き下げでさらに求人が難しくなる」と話しています。
全国ホームヘルパー協議会、日本ヘルパー協会は「このままでは訪問介護サービスが受けられない地域が広がりかねない」として、2月1日に国に抗議文を出しました。
小川キャスター:
以前、地方の介護事業所を取材したのですが、資金繰りが難しく、自宅を担保に入れて借金をするなど、非常に厳しい現状となっていました。
こうした事業所が倒産すると、介護保険料を支払っている国民が、将来サービスを受けられないことになってしまうのではないでしょうか。

結城教授:
この問題は全国に波及しています。方針の見直しは原則3年に一度ですが、臨時に見直すこともできるので、考えていただきたいですね。

伊沢さん:
負担したのに受益することができない人がいるのは、そもそも制度上の問題です。台湾のTSMCの工場が熊本にできましたが、そこでもまたニセコのように賃金格差が出て、同じようなことが起こり得るかもしれません。
日本の経済が停滞している中、外国の資本を入れていこうという流れが止まってしまう可能性もあるわけですから、こういった問題をしっかりと対処しなければいけません。1回失われたサービスというのは、なかなか復活しませんので、本当に急ぐ必要があると思います。
介護職員不足 解決策は?「みんなの声」は

NEWS DIGアプリでは『介護業界の人手不足』などについて「みんなの声」を募集しました。
Q.介護職員不足の解決策 何が必要?
「賃上げ」…79.0%
「外国人職員の増加」…6.1%
「高齢職員の増加」…4.5%
「ロボットの活用」…7.0%
「その他・わからない」…3.5%
※3月14日午後11時26分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは15日午前8時で終了しました