虐殺否定フェイクの狙いとは

虐殺は233人だと主張する「そよ風」の人々

映画『リリアンの揺りかご』では、大震災から100年、つまり2023年9月1日の様子を撮影しました。それは前回の取材(2019年)を上回る醜悪さでした。「そよ風」は“真実の慰霊祭”と称し、233人に限定して追悼する、というのです。233人という人数は、「朝鮮人を殺害した」として日本人が起訴された刑事事件の被害者の総数です。

立件されなかった事件が圧倒的に多かったのは言うまでもありません。しかも「そよ風」の参加者はこの233人を「日本に対して暴動を起こした朝鮮人」と位置づけていました。

現場で、虐殺の歴史を掘り起こしてきたノンフィクション作家、加藤直樹さんにお会いしました。加藤さんは怒りをこらえていました。「今回彼らは、心にも思っていない“朝鮮人の追悼”と言い出したわけです。これは、最悪の冒涜だと思います。例えば、ベルリンでネオナチがホロコースト犠牲者の追悼碑の前で『ユダヤ人の追悼を行います』と言い出したら、ベルリン市が認めるか、ということです。『ユダヤ人を殺せ』といつも言っている人たちがですよ」
私が「小池百合子都知事の責任は大きいですね」と漏らすと、加藤さんは「大きいです……それは、本当に大きい」と唇をかみしめていました。

今回の映画『リリアンの揺りかご』で、私が位置付けた現代日本の不寛容は、やまゆり園事件(虐殺)、ヘイトスピーチ(差別)、歴史の改ざん(妄信)、そして不実な小池百合子都知事の言動(頑迷)です。日本史学を学んできた私は、確信しています。将来の歴史学において、小池百合子都知事の言動はその不誠実さを必ず記録される、と。

神戸金史(RKB毎日放送)