大金の正体は?

捜査にあたった神奈川県警は、札束に残された帯封の日付や、金融機関名から持ち主の割り出しを進めました。
その結果、事件から1か月後に「東京都大田区で通信販売の会社を経営する社長(当時46歳)が、竹やぶに現金を置いたことを認めた」と発表しました。

社長会見は脱税疑惑を目の前で認めるという驚くべきものになりました。

「紛失した」のではなく「わざと置いた」?
報道陣が色めきたつ中、当の社長も会見し、次のことを認めました。
「切手の売買で得たカネを2度に分けて竹やぶに置いた。脱税したカネだった。善人に拾われ、社会に役立てるよう寄付してほしかった」

意外な入手先

切手の売買?脱税?
そもそもそんなに儲かるなんてどんな会社なんでしょう。答えは意外なものでした。
当時、少年マンガ誌の裏表紙などで様々なものを広告し、売っていた通販会社を憶えていらっしゃるでしょうか。何社かある中の1社が、この社長が経営する会社だったのです。

少年マンガ誌の一番最後のページに、ありましたよね。

この会社の一番のセールスポイントは「現金でなく切手で買える」ということでした。客にとっては現金書留にする手間がなく、手数料もなく、郵送料も安くすみ、大歓迎でした。
当時、切手はほぼ現金のように扱われました。
大量に売買すると、額面の90%以上で取引されたといいます。もちろん残りの数%分は商品価格に上乗せされていました。
社長はその儲けをなぜか隠していたのです。

当時の金券ショップ。大量売買することで、市中の買い取り価格より高く売買されていたと言います。

騒動の決着?

竹やぶから出てきたカネは、結局、合計2億3,521万円。
騒動が収まった後、拾得者2人にはそれぞれ10%が報労金として支払われ、社長には追徴課税が課されました。
なぜ最初から適切に申告しなかったのか、大金は後で竹やぶにとりに来るつもりだったのか、今となってはどこか腑に落ちない部分も多い事件でした。

合計2億3,521円が竹やぶに打ち棄てられていたのです。

あれから35年。現在ではこんな大金を現金で授受する人はほぼいません。ましてや商品を切手で売買するなんてこともほぼなくなりました。
あらゆる決済が電子決済当たり前となり、税金すらもネット上の申告が推奨される今、竹やぶ事件はすでに前世紀の「不適切なミステリー」になってしまったのです。