東日本大震災では、逃げ遅れた人を助けようとして多くの人が犠牲になりました。こうした「助ける側の人たちの命」を守るために、避難のルールを決めた地域があります。

巨大な防潮堤に囲まれた岩手県大槌町安渡地区。

「訓練、訓練、大津波警報が…」

放送を合図に、町内会が貸し出しているリヤカーを組み立て、足腰が悪く一人では逃げられない人を高台の避難場所に搬送します。距離は400メートル。3人がかりで、ひたすら坂道をのぼっていきます。目標タイムは15分です。

大槌町安渡町内会長 佐々木慶一さん
「15分あれば、ここまでは避難できます」

リヤカーに乗った高齢者
「みなに引っぱったり押したりしてもらったから、いいなと思いました」

震災前の安渡地区の人口は、およそ2000人。3月11日、この集落だけで217人が犠牲になりました。

中でも町内会が深刻に受けとめたのは、住民を助けようとした町内会の人達、民生委員や消防団員が逃げ遅れたことです。いわゆる共倒れです。

その反省から生まれたのが15分ルールです。この地方の大津波は、地震から30分以内に襲って来るからです。

佐々木町内会長
「皆が助かる環境を(地震発生から)最初の15分で作る」

「15分ルール」は、助ける側の命を守るのが目的です。そのためには、助けられる側も逃げる努力をしなければなりません。

佐々木町内会長
「助けられる側のほうにしても、自分が助かる可能性があるとしたならば、最初の15分の間にせめて玄関先までは出てきてもらう。そうすると周りの人が一緒に避難してくれるだろう。手を引っぱって、あるいはリヤカーに乗ってというかたちで助けてくれる人ができるだろうから」

逃げる時間を確保するために、消防団も15分以内に退避することを決めました。

安渡地区消防分団長 里舘功美さん
「消防団も避難しますので、その中で人が困っていたら拾いながら、15分以内で逃げなさいとなっていますので、それだけは守りたいと思っています」

震災から13年、防潮堤も完成し、多くの住宅が高台に再建されました。しかし、地区の人口は3分の1にまで減少、訓練の参加者も徐々に減ってきています。

佐々木町内会長
「訓練をすることで(防災)意識を持続させるところでは意味がある」

安渡地区では、今年は3月10日に避難訓練を行います。いつか必ず襲ってくる大津波に備えて…。