脳へのダメージで思うように言葉が出せなくなる障がい『失語症』。全国に約50万人いるとされます。今回、脳梗塞の後遺症で失語症となった女性を取材しました。この女性が目指したのは職場復帰です。

病気や事故で発症する『失語症』

 大学生の娘と高校生の息子のために弁当を作る西田小百合さん(54)。利き手ではない左手で野菜を切ります。右手は添えることができません。調理工程をつぶやきながら時間をかけて料理していきます。こうした生活ももう3年になります。

 (つぶやきながら調理をする西田小百合さん)
 「たまごを割る。フライパンを…フライパンに油を塗る」

 2019年の冬、西田さんは突然自宅で倒れました。脳梗塞でした。半年間の入院でようやく歩けるようになりましたが、左脳の一部が損傷した後遺症で、右手と右足にまひが残りました。しかし脳へのダメージによる障がいはこれだけではありませんでした。言葉が思い通りに出せなくなったのです。

 (西田小百合さん)
 「子どもの名前を言えなかったし、『あーあー』『えーえー』とか(しか言えない)。『おしっこ』も言えなかった。毎晩1人になったら泣けて泣けて、一瞬にして障がい者になるって」

 そのとき診断されたのが耳なじみのない失語症という症状でした。

 失語症とは大脳の言語中枢が損傷したことで起こる言葉の障がいで、「話す」「書く」「読む」「聞く」「計算する」ことが難しくなります。病気だけではなく、交通事故で発症することもあり、全国に約50万人いるとされています。

 【失語症】※厚生労働省HPより
 「脳梗塞や脳外傷などにより脳の言語中枢が損傷され起こる障がい。物事を考える機能は保たれているが、自分の考えを『言葉』の形にすることができず『話す』『話を聞いて理解する』『読む』『書く』など言葉にかかわる機能が失われ、周囲とのコミュニケーションをとることが困難」