低遅延で低消費電力、そして大容量のデータのやり取りを可能にするNTTの次世代通信技術「IOWN」が今注目されている。私達の暮らしにどのような変化をもたらすのか。
次世代通信「IOWN」が描く未来 低消費電力で大容量・低遅延

2023年12月、歌舞伎座で上演された「超歌舞伎」。舞台上のバーチャルアイドルがアドリブにも対応し、息の合った演技を披露する。実は離れたスタジオの演者の動きをリアルタイムで反映させたもので、NTTが1960年代から開発を進めている。光の技術を使った次世代通信技術IOWNがこれを可能にした。

バーチャルアイドルと遅延なくじゃんけんをすることもできる。来場者は「こっちの行動にちゃんと反応があるのがびっくり」と驚く。台湾からの来場者は「(バーチャルアイドルの)ミクさんがつめてくるところがドキドキした。長距離で台湾でも演技をしてもらえるような活用がこれからの技術が成長してできるのではないか」という。
映像や音声など情報を伝送する場合、通常電気信号が使われるが、これを光の信号にすることで、大容量のデータを低遅延で伝送するという通信の高速化を実現し、さらに開発が進めば、消費電力を大幅に削減できるという。この技術で、例えば将来、スマートフォンの充電が年に1回で済んだり、車の位置情報を管理制御することで事故や渋滞をなくす未来も実現可能だという。いま「IOWN」は世界標準の獲得に向けた動きが加速している。

NTT 川添雄彦 代表取締役副社長:
新しい価値を皆さんと創造していきたい。

神奈川県厚木市にあるNTTの研究施設。ここでは、これまで機械の中で電気信号で行っていた情報処理を、光の信号に置き換えるデバイスの研究開発をしている。
NTT機能材料研究部 ナノ構造集積機能デバイス研究グループ 藤井拓郎研究主任:
光は短い距離はもちろん、長い距離でも、ほとんど損失なく発熱を非常に小さく抑えながら通信を行うことが可能。コンピュータのボードの中にまで光を入れていくことを試みている。
電気信号に比べて、消費電力を大幅に削減できる光による情報処理。2030年の実現を目指しているが、課題について次のように説明する。
NTT機能材料研究部 ナノ構造集積機能デバイス研究グループ 藤井拓郎研究主任:
装置の1個1個がもう何千万円とか何億円したりするので、世に出していくときは何万円とか何千円とかで作らないといけないのがチャレンジング。

「IOWN」の開発に対して、政府も大きな期待を寄せている。1月30日、経済産業省は、NTTの他、キオクシアやNEC、富士通などが参加する光技術を使った次世代の半導体開発に最大で452億円を支援すると発表した。
齊藤健 経済産業大臣:
将来のゲームチェンジにつながっていくことを期待しています。
今回、NTTはアメリカの半導体大手インテルなど海外企業とも提携を深めていく考えで、次世代通信規格の世界標準の獲得に向けて、官民一体の動きが加速している。