長谷川さんが話す「北海道のこと」とは、北海道警察によるヤジ排除問題だ。2019年7月の参議院選挙期間中、安倍晋三首相(当時)が札幌で自民党候補の応援演説をしていたとき、「安倍やめろ」「増税反対」などとヤジを飛ばした市民を警察が強制的に排除した。排除された大杉雅栄さんと桃井希生さんは道警側を相手取り損害賠償訴訟を起こし、2022年3月、札幌地裁は警察の行為は表現の自由を奪ったもので違法だとして、計88万円の支払いを命じた。だが、札幌高裁は2023年6月、大杉さんの請求を棄却。一方、桃井さんについては一審判決を支持した(現在双方とも最高裁に上告中)。

(2019年7月、札幌で警察に排除される大杉さん※映画「ヤジと民主主義 劇場拡大版」より)

 再び1月19日の八王子市長選での排除に戻る。

 長谷川さんによれば、民間人の男性に腕を抱えられ100メートルほど先まで強引に連れて行かれた。持っていた米袋は別の男性に奪われ、二つにちぎられたという。 

 そこへ制服姿の警察官がやってきた。警察官は「ちょっと話を聞かせてください」と言って近くの八王子駅北口交番まで来るよう求めてきた。長谷川さんが自らスマートフォンで撮影した動画にやりとりが残っている。 

警察官「協力してください、お願いします」
長谷川さん「嫌だ」
警察官「協力してください、協力ね」
長谷川さん「嫌だよ、嫌だと言っているの。何の権利があるんだ」
警察官「協力ね」「危ない」
長谷川さん「何の権利があってこんなことしているの」
警察官「ね、お話聞かないといけないから」
長谷川さん「嫌だよ、おれが何をしたって言うの」
警察官「お話聞かないとわからないから、両方のお話」

(1月19日、長谷川さんに同行を求めた警察官※動画より)

 長谷川さんは何度も同行を拒否するが、警察官は長谷川さんの腕を掴み、数人がかりで交番に連れて行ったという。男性らも交番に付いてきて、排除した理由を「選挙の自由妨害だ」と主張した。