鍵がかかる部屋で

札幌市内に借りた部屋は、トイレ付きの6畳一間です。とりあえず、テレビと冷蔵庫とお湯を沸かす電気ポット、それにどんぶりと湯のみカップを一つずつ買いました。
「落ち着いたらまた、路上に戻ろうかなぁと思ってんねん。ガハハハハ~!」
H.Yさんは、冗談とも本気ともつかないような表情で笑います。

部屋には、半額で買ったという賞味期限間近のカップ麺が、段ボール箱で作った棚に並べてありました。
「妹に連絡してみようかなぁと思ってんねん」
◇文・写真 HBC油谷弘洋
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路上生活者はこの十数年で減り、街角でも見かけることが少なくなりました。その一方で、車の中やインターネットカフェを転々としながら暮らす人が増え、生活困窮者の実態が見えにくくなっています。ハウスレスという言葉をご存知でしょうか?ホームレスとハウスレスの違いは何でしょうか?
生活困窮者がそうした暮らしを続ける理由は多様です。経済的な問題だけではなく、家族や職場とのトラブルから居場所をなくして孤立する人、障害や精神疾患があって社会への適応が難しい人、依存症になって治療を要しながらもその伝手を得ることができない人、一旦は生活保護の受給を得てもまた路上に戻る人など様々です。
冬には-10℃を下回る厳しい環境の札幌で、ホームレスの人、ハウスレスの人、彼らを支援する人…。この連載企画では、それぞれの暮らしと活動に向き合って、私たちのすぐそばで起きている貧困と格差の今を考えます。
【連載のバックナンバー】
(第1話)ホームレスもハウスレスも経て…(1)
(第3話)ホームレスを支援する元ホームレス(1)
(第4話)ホームレスを支援する元ホームレス(2)
(第5話)伴走型支援で寄り添う留学生ボランティア
(第6話)地味に関わり続けて学ぶ看護学生
*このシリーズは今後も不定期で連載してゆきます