■世界陸上オレゴン・5日目(日本時間20日・米オレゴン州ユージーン)

世界陸上は日本時間の20日、大会5日目を迎え、女子走高跳決勝が行われた。「陸上競技で母国を助ける」と語り、今大会に挑んだウクライナのY.マフチク(20)は、2m02で銀メダルを獲得した。アイメイクやネイルに、ウクライナ国旗と同じ青と黄色を使用し登場したマフチク。「競技場から国を守る」と話していたその思いの強さが表れていた。

金メダル争いは今季世界ランキング1位のマフチクと、自己ベストを更新する跳躍を見せていたE.パタソン(26・オーストラリア)の二人に絞られた。
2m02を2回目にクリアしていたマフチクは、今季の自己最高2m03を超える2m04にバーが上がると、1回目を失敗。2回目、3回目もクリアすることができなかった。
パタソンも2m04を超えることができなかったが2m02を1回目でクリアしていたため、金メダルはパタソン、銀メダルがマフチクとなった。

前回大会(ドーハ)のマフチクは、自己ベストを4cm更新し2m04に成功。18歳と11日で銀メダルを獲得し、世界陸上・女子走高跳史上、最年少メダリストとなり注目された。

しかし今年2月24日。ロシア軍によるウクライナ侵攻で目の前の世界は一変した。当時ウクライナの自宅にいたマフチクはその時の心境について次のように語っている。

マフチク選手
「自宅を出た際にはパスポートと少しの現金だけ。生活を続けられるか、将来はどうなるのか・・・。最悪の気持ちでした」

命の危険に怯える日々の中、マフチクは試合に出ることを決断。「難しいことですが、私の役割は競技に出続けることだと分かっています。陸上競技で母国を助けるんだという気持ちでした」。約3週間後にセビリアで行われた世界室内に出場して優勝、ダイヤモンドリーグも4戦で3勝を挙げ、今季世界ランキング1位で迎えた今大会だった。

試合後「ここに来られてよかったです」と話したマフチク。「世界陸上で2個目のメダルが取れました。私にとって、とてもよい経験、感情でした。この舞台に、表彰台に上がれて、とても幸せです。ウクライナの人々のためのメダルです」と笑顔でフィールドを後にした。