暗号資産(仮想通貨)ビットコインのマイニング(採掘)活動を米国に集中させるというトランプ米大統領の公約が、AIブームと長引く仮想通貨相場の低迷という二つの圧力を受け、急速に崩れつつある。

最近の値上がりを経ても、ビットコインの時価総額は2025年10月のピークから約1兆ドル(約155兆円)減少している。一方、取引を検証して報酬を得るビットコインのマイニングは、採算面でこれまでになく魅力を失っている。

AIによる電力消費の急増を受け、マイニング事業者の間では、施設をAI向けに特化したデータセンターへ転換する動きが加速している。上場マイニング企業は今年末までに、収入の大半をAI事業から得るようになると予想されている。仮想通貨マイニング機器メーカーの一部も、AIへの事業転換を進めている。

シアトルのマイニングサービス会社ルクソール・テクノロジーのデータによれば、現在のビットコインのマイニングに使われる計算能力は昨年10月と比べ18%減少している。同社のイーサン・ヴェラ最高執行責任者(COO)は「米国の上場企業で最も大きく減っている。エネルギーをAI向けに振り向けているためだ」と指摘し、「この傾向が続くと予想している」と語った。

市場は縮小しているだけではない。長年続いてきた流れが逆転し、その重心が米国から中国とロシアへ移りつつある。これは、かつて成長の兆しを見せ、2024年の大統領選でトランプ氏が仮想通貨支持層に訴えた政策の主要な柱となっていた市場にとって、劇的な変化だ。中国との競争の可能性を意識していたトランプ氏は、すべてのビットコインを米国で「造り、採掘し、鋳造」したいと述べていた。

トランプ氏のファミリーもこの変化の影響を受けている。トランプ家が支援し、仮想通貨が最高値から急落する直前の2025年にスタートしたマイニング企業アメリカン・ビットコインは、3四半期連続で赤字を計上し、株価は過去1年間で約90%下落した。

中国はかつて、安価なエネルギーに加え、ビットメイン・テクノロジーズなどが国内で製造する機器を容易に調達できたことから、仮想通貨マイニング業界を支配していた。

だが、2021年に中国当局が大規模な取り締まりに乗り出したことで状況が一変し、事業者の国外流出を招いた。その後、米国が市場の中心となり、MARAホールディングスやライオット・プラットフォームズなど多数の上場企業が急速に事業規模を拡大した。

こうした企業は、機関投資家向けのマイニングプールを利用している。これは、マイニング事業者が報酬を得る確率を高めるため、計算能力を集約するプラットフォームだ。

MARAなどの米上場企業は「ファウンドリーUSA」のような米国の規制に準拠したプールを利用する傾向がある。一方、「アントプール」「F2プール」は米国外のマイナーにより多く利用されている。

ハッシュレート・インデックスによると、ビットコインネットワーク全体の計算能力に占めるファウンドリーUSAのシェアは、3分の1超から26%に低下した。プールのデータから把握できるマイニング業界の変化は大まかな推計にとどまるものの、米国から離れる動きは明確だとヴェラCOOは指摘した。

ハードウエア劣勢

この変化は、仮想通貨マイニング機器メーカーの事業判断からも見て取れる。カリフォルニア州サンタクララに拠点を置くマイニング機器スタートアップ、オーラダインは3月、社名をヴェローラAIに変更し、新たな半導体設計と知的財産(IP)プラットフォーム事業を打ち出した。

同社は8月、資金調達ラウンド「シリーズA」で1億1000万ドルを集め、評価額が10億ドルを超えたと発表。ヴェローラAI(Velaura AI)共同創業者のラジブ・ケマニ最高経営責任者(CEO)は、ここ数年で「電力とエネルギー効率が、AIデータセンターだけでなく、新たに登場しているフィジカルAIの用途でも、最も重要な制約の一つになりつつあることが明確になった」と話した。

オーラダインの事業転換は、ここ数年に米国で活発化した仮想通貨マイニングが、最終的には一時的な現象に終わる可能性を示唆している。

中国では大半の暗号資産関連事業が正式に禁止されているものの、マイニング機器分野では依然として圧倒的な存在感を維持しており、ビットメインはほぼ独占的な地位を保っている。

暗号資産を支持するロビイストの間でも、こうした現実が認識され始めている。ブロックチェーン業界のロビー団体デジタル・チェンバーによれば、米国で製造施設を建設することは非常に難しく、特にエネルギーを大量に消費する施設では困難が大きい。

マイニング機器メーカーは生産能力を米国内に移す取り組みを積極的に進めているものの、許認可に長い時間がかかることや、電力確保、サプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性、関税などが障害となり、断念するケースも多いという。

ただ、そうした取り組みの少なくとも一部は続いている。

ツイッター(現X)の共同創業者ジャック・ドーシー氏率いる米デジタル決済会社ブロックは1年前、独自のマイニング機器「Proto Rig」を発表した。だが、その後ブロックはこの製品についてほとんど情報を発信していない。

シンガポールのビットディア・テクノロジーズ・グループは7月、ネバダ州スパークスに米国初の製造施設を建設するため3600万ドルを投資すると表明した。この施設では、暗号資産のマイニングに使う同社の「Sealminer」を月1万台生産する計画だ。ビットディアAIのバイスプレジデント、リテイナ・リン氏はインタビューで、「ビットコインマイニングは今なお中核事業の柱だと考えている」と述べた。

原題:AI Boom Wrecks Trump’s Plan for ‘Made-in-America’ Bitcoin Mining(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.