(ブルームバーグ):米国とイランの戦争は長期化の様相を強めている。戦闘が低強度にとどまったとしても、早期の停戦実現や、中東からのエネルギー供給が正常化する兆しはほぼ全く見られない。
ホルムズ海峡の通航量減少を受けて、代替ルートとして重要性を増している紅海では、イエメンの親イラン武装組織フーシ派が港湾都市モカを制圧したとの情報があり、中東情勢がさらに不安定化する恐れが出ている。
イラン指導部は、今回の戦争を国家の存亡に関わる脅威とみなしており、経済的な痛みが増しても戦闘を続ける決意だと、ブルームバーグはイラン政府高官の話として報じた。イランはミサイル能力を再構築しており、米国側が攻撃を激化させれば、米国や湾岸諸国の関連施設に対する攻撃を拡大する構えだという。
一方、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると、バンス副大統領やルビオ国務長官を含む政権高官がトランプ大統領に対し、イラン戦争は同氏の任期が終わる2029年1月まで続く可能性があると伝えた。
戦況はこう着状態に入りつつある。ホルムズ海峡の支配やイランの核開発計画など、重要な争点は依然として解決していない。
トランプ氏は、戦争の目的はイランによる核兵器開発を阻止することだと繰り返し主張しているが、イランが保有する兵器級に近い濃縮ウランの状況や所在は分かっていない。イスラエルと米国がイラン各地の大規模な核施設を攻撃した2025年6月以降、国際原子力機関(IAEA)は確認できていないとしている。
IAEAは10日、イランのピックアックス山で建設活動を確認したと発表した。同施設は厳重に防護され、核関連活動が行われている疑いがある。トランプ氏はここ数日で2度言及し、新たな攻撃対象となる可能性を警告している。
早期終結への期待乏しく
長期化の見通しが強まっている現在の状況は、11月3日の中間選挙後に戦争は「直ちに」終わると言い放ったトランプ氏の発言とは相容れない。中間選挙では、イラン戦争とそれに伴うエネルギー価格の上昇が大きな影を落としている。
原油は足元で騰勢を強めており、北海ブレントは10日、一時1バレル=108ドルを突破した。背景には、中東情勢の悪化で供給懸念が強まっていることがある。サウジアラビアは石油輸出国機構(OPEC)に対し、8月の原油生産が急減し、1990年以来の低水準となったと報告した。
米国はイランの港湾封鎖に加え、イランと取引を継続する国に二次制裁をちらつかせて圧力をかけ、イランを交渉の場に引き戻そうとしている。
トランプ氏は記者団に対し、イランは「これ以上持ちこたえられない」状況に追い込まれており、中間選挙に影響を及ぼそうと「必死になっている」と述べた。
ただ、中東の外交関係者の多くは、トランプ氏ほど楽観していない。イランとホルムズ海峡の新たな航路について協議しているオマーンは、米国の経済圧力によってイランが合意に前向きになっている兆候はないとみているという。
匿名を条件に語った同関係者によると、一部の欧州諸国もオマーンと同じ見解を抱いている。
オマーン外務省は現時点でコメントの要請に応じていない。
フーシ派も攻撃強める
北海ブレント原油は今週、9%余り上昇した。ホルムズ海峡周辺で、船舶への攻撃が増えているためだ。イラン戦争前には、世界の原油と液化天然ガス(LNG)の約5分の1が同海峡を通過していたが、戦闘の影響で通航量は急減している。
イラン革命防衛隊は、米国が2カ所を攻撃するごとに20カ所を攻撃すると表明した。タスニム通信が9日に報じた。
今週には、イランが米軍艦1隻に攻撃を仕掛けたことを受けて、米国はイランの石油タンカーを攻撃して報復した。これに対しイランは、ヨルダンの米軍基地や複数の商船を攻撃した。
一方、イランが支援するフーシ派も、別の戦線で独自に攻撃を展開しており、主にサウジアラビア南部のインフラを標的としている。
またサウジが支援するイエメン政府軍との戦闘が激化する中、フーシ派はバベルマンデブ海峡に接する紅海沿岸地域へ進軍している。
複数のアナリストによると、フーシ派は紅海南端に近い港湾都市モカの制圧を目指して支配地域を広げており、一部ではすでに掌握したとの見方も出ている。
フーシ派は近年、ホデイダ港やバベルマンデブ海峡周辺の支配地域を拠点に、海運や原油市場を混乱させてきた。モカを掌握すれば、この地域で2つ目の重要港を支配下に置くことになり、同海峡への影響力をさらに強めることになる。
海運安全保障コンサルタントのビョルン・ベイレンス氏は、モカを掌握すれば「同地域の海上安全保障に確実に影響を及ぼし得る」と指摘。「さらに南下し、海峡のほぼ全面的な支配を目指す足掛かりになり得る」と述べた。
原題:Iran, US Brace for Long War With Neither Side Ceding Ground (2)、Houthi-Saudi Fighting Escalates as Rebels Push Toward Key Strait(抜粋)
(フーシに関する情報を第2段落、および最終4段落に追加して更新します)
--取材協力:Lisa Abramowicz、Annmarie Hordern、Jonathan Ferro.
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