債券売却の動きや為替相場の急変動の緊張に既にさらされている世界の金融市場は、主要中央銀行による利上げ見通しや財政赤字を巡る懸念の高まり、中東での紛争長期化で、今後数カ月にさらなるボラティリティーに直面する可能性がある。

米国の投資家がレーバーデーの祝日明けとなる8日に市場へ戻り、こうした課題が前面に浮上する見通しだ。円相場の下支えや米国債利回りの上昇抑制に向けた政府の介入を巡るニュースが相次いだにもかかわらず、先月は記録的な静けさとなった。ユーロの値動きは2012年以来最も狭いレンジにとどまり、米国債の値動きさえも08年の金融危機以降、8月として最大の縮小を記録した。

債券・為替投資家には重要日程がめじろ押しだ。米連邦準備制度による利上げの可能性のほか、欧州中央銀行(ECB)や日本銀行も追加利上げに踏み切る可能性がある。欧州では政治情勢や歳出の優先順位が変化するかもしれない。一方、トランプ米大統領は11月の中間選挙で重要な試練を迎える。

オーストラリアの債券ファンド運用会社ジェイミソン・クート・ボンズのチャーリー・ジェイミソン最高投資責任者(CIO)は、「波乱含みの展開になりそうだ」と指摘。投資姿勢を「慎重」にしている同氏は、「全てに影響を及ぼすのがトランプ氏と原油だ。このため、ボラティリティーが高まることだけはほぼ確実だ」と話した。

年末までに市場が迎える主なマクロイベントは以下の通り。

主要中銀

ECBは早ければ10日の政策委員会会合で、市場の期待によって身動きが取りにくくなる可能性がある。投資家は0.25ポイントの利上げを予想。年末までにさらに1回の利上げをほぼ織り込んでいるほか、それが10月に実施される確率を約25%とみている。ただ、最新の成長率とインフレ率の見通しを踏まえ、当局者は市場が予想する追加利上げを示唆することに慎重になる可能性がある。

来週には、米連邦公開市場委員会(FOMC)会合と日銀の金融政策決定会合が開かれる。円を調達通貨とするキャリートレードにとって、約2年前に大きな混乱を伴う巻き戻しが生じて以来、最大の試練も控えている。

ウォーシュ連邦準備制度理事会(FRB)議長は8月28日の講演で、インフレについて従来よりタカ派的な姿勢を示したが、実際の政策対応につながるかどうかには疑問が残る。スワップ市場では16日のFOMC会合での利上げ確率を五分五分と織り込んでおり、11日発表の8月の米消費者物価指数(CPI)が弱い内容となれば、その確率はさらに低下する可能性がある。

日銀はその翌日に2日間の金融政策決定会合を開始する。事情に詳しい複数の関係者によると、当局者は物価の上振れリスクを受け、今月0.25ポイントの利上げを実施する方向に傾いており、その後は引き締めペースを速める可能性もある。

連邦準備制度がハト派姿勢、日銀がタカ派姿勢をそれぞれ打ち出せば、ドル・円はさらに下落し、推計1030億ドル(約15兆7930億円)に上る円に弱気なポジションがリスクにさらされる可能性がある。

円が2月以来の高値まで上昇する中、キャリートレード巻き戻しの兆候は既に顕在化している。一段と急激な巻き戻しとなれば、株式や債券、新興国市場にボラティリティーが波及し、日本が世界的な市場ストレスの震源となる可能性がある。

財政面のジレンマ

英国の財政見通し悪化はポンドにとって一段と大きなリスク要因となっており、予算案発表を来月に控えて英国債利回りが急上昇している。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)によると、借り入れコストの上昇とインフレによって、政府が確保していた240億ポンド(約4兆9870億円)の財政余力のうち、既に約120億ポンドが失われた。債務残高が国内総生産(GDP)の約95%に達する中、投資家は債務を抑制するための信頼できる計画を求める見通しだ。

バーナム首相は、財政規則の順守を表明する一方、国防費の増額や経済における政府の役割拡大を約束している。ただ、こうした公約の財源をどう確保するかはまだ説明していない。予算案で十分な財政余力を回復できなければ、投資家はこうした計画に疑念を抱く可能性がある。その場合、英国資産のリスクプレミアムが拡大し、ポンドの重しとなる恐れがある。

フランスも来年4月と5月に行われる2回投票制の大統領選を前に、同様の懸念に直面している。財政赤字がGDP比5%を超え、債務コストも上昇する中、信頼できる財政計画で早期に合意できなければ、極右、極左双方の候補が歳出拡大を掲げていることもあり、財政への圧力がさらに強まる可能性がある。

市場は既にこうしたリスクの一部を織り込んでいる。フランス国債とドイツ国債の利回りスプレッド(格差)はユーロ圏債務危機以来の大きさに近づいており、フランス株と銀行クレジットは相対的に低調なパフォーマンスとなっている。

選挙

他の国でも選挙を巡る動きが活発化する見通しだ。米国では11月に中間選挙が行われ、選挙結果は財政政策を左右する公算が大きい。民主党は上院を奪還する可能性が高まっているとみており、勝利すればトランプ氏が調査や弾劾手続きに直面する可能性があるほか、大統領による人事の上院承認も難しくなる恐れがある。

こうした状況は米国債や世界の債券市場の値動きをさらに大きくする可能性がある。米国の公的債務は40兆ドルに達し、借り入れコストは数十年ぶりの高水準に近づいている。

企業の借り入れ

9月は通常、年間で新規債券発行が最も活発になる月の一つだ。投資家や企業が夏季休暇から戻り、借り手が決算発表前の起債自粛期間に入る前に資金調達計画を完了しようとするためだ。

米国では8月の時点で既に資金調達が過去最高のペースで進んでいた。AI関連のインフラ整備への支出も追い風となり、月間の債券発行額は3カ月連続で過去最高を記録し、資金獲得を巡って米国債発行と競合している。

ブルームバーグ・ニュースがディーラーを対象に実施した非公式調査によると、9月の投資適格債の発行額は約2150億ドルと予想されている。実現すれば昨年9月に記録した過去最高を上回るが、ウォール街では発行額が2500億ドルに達する可能性があるとの予想もある。

一方、欧州では夏季の閑散期が異例の早さで終わり、8月後半には債券発行が過去最高のペースで再開した。一部企業が発行ラッシュに先駆けて資金調達に動いた。

地政学的要因

米国とイランの対立が激化し、北海ブレント原油は再び1バレル当たり100ドルに迫っており、世界的なインフレ懸念をあおっている。エネルギー価格のショックがさらに深刻化すれば、石油・天然ガスの輸入依存度が高い欧州と日本の通貨にも下押し圧力がかかることになる。

米国では、連邦最高裁が広範な輸入関税を無効とする判断を下した後、トランプ氏が保護主義的な通商政策の復活を図り、貿易を巡る緊張も高まっている。

カナダ政府は、8月21日の通商協議が不調に終わったことを受け、トランプ氏が200億ドル相当のカナダ製品に50%の関税を課したのに対抗し、9月8日に米国への新たな報復関税を発動した。この対立は、インフレを押し上げる一方で成長を圧迫することで、カナダ・ドルの下落要因となる恐れがある。

中国との緊張も高まりつつある。習近平国家主席は、米中間の貿易休戦を維持するため、9月末にトランプ氏と会談する予定だ。ただ、米国は中国の製造業の過剰生産能力を巡る問題を理由に、中国製品に7.5%の関税を課す予定で、中国政府が報復措置を講じる可能性がある。

ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントでポートフォリオマネジャー兼シニアリサーチアナリストを務めるキャロル・ライ氏は、「原油ショックに加え、連邦準備制度の利上げ再開と日銀再利上げ、政治的不透明感、AI関連の信用懸念が重なることで、資産横断的なボラティリティーが高まり、リスク資産が下落する可能性がある」との見方を示した。

季節要因

モルガン・スタンレーのグローバル債券調査責任者、アンドリュー・シーツ氏は、為替・金利市場をはじめとする多くの市場で予想されているボラティリティーの水準について、依然として異例の低さにあるとみる。

シーツ氏はポッドキャストで、「1世紀を超える市場の歴史を振り返ると、9月は平均的な月よりもボラティリティーが高まる傾向がある」と指摘。「投資家が夏季休暇から戻り、資本市場の活動が本格的に再開すると、歴史的に見て事態は動く傾向がある」と語った。

原題:Global Markets’ Summer Lull to End as Volatility, Risks Mount(抜粋)

--取材協力:ジョン・チェン、Ronan Martin.

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