(ブルームバーグ):中国は国内大手の銀行・保険会社に3000億元(約7兆円)を注入する。約20年間で最大規模の資本増強となる。経済成長が鈍化する中、金融システムの健全性を下支えし、融資を維持する狙いだ。
財政省は中国工商銀行、中国農業銀行、中国人民保険集団を含む金融8機関の資本を増強するため、特別国債を発行する。6日の公式発表で明らかになった。
今回の措置は、2025年初め以降に実施された計5000億元の政府による資本注入に続くものだ。中国政府は世界第2位の経済大国である自国の景気再活性化に向けた取り組みを強化している。
李強首相は最近、年間の成長目標の達成に向けて「全力を尽くす」よう当局者に求めた。政策当局は融資への補助金や、企業・消費者を対象としたその他の資金調達支援など、追加措置を検討している。
中国の金融機関は十分な資本余力を確保しているが、中国政府の資本増強計画は企業や家計への融資余力をさらに高めることを狙う。金融安定の確保は習近平国家主席の政策課題の柱であり、特に中国が米国との長期にわたる貿易・技術面での競争に直面する中、その重要性が増している。中国政府は、不振が続く不動産部門や膨張する地方政府債務に起因するリスクの封じ込めを積極的に進めている。
華源証券のアナリスト、リャオ・ジーミン氏は「主要国有金融機関の資本増強は過去2年間にわたる政策措置であり、緊急対応ではない」と指摘。「重要なのは、銀行が規制要件を満たし、実体経済を支える十分な能力を確保できるよう、あらかじめ資本面の手当てをしておくことだ」と述べた。
上海証券取引所への6日の届け出によれば、中国農業銀行は最大1600億元、中国工商銀行(ICBC)は1000億元の第三者割当増資をそれぞれ計画している。両行とも、調達資金の全額をコアTier1資本の補充に充てるとしている。
財政省は中国農業銀行の増資で1300億元、ICBCの増資で700億元を引き受ける。中国煙草総公司も両行の増資で大口の引受先となる。
財政省は中国人民保険集団による150億元の株式割当を全額引き受ける。このほか、中国輸出入銀行に300億元、中国人寿保険に350億元、中国太平保険集団に70億元、中国再保険集団に30億元、中国輸出信用保険公司に100億元を拠出する。
銀行部門の平均純金利マージンは過去最低水準まで低下し、銀行の内部留保による資本積み増し余力を圧迫している。6月時点で、中国の銀行の平均自己資本比率は15.26%、コアTier1比率は10.72%だった。
今回の資本増強は、2024年から進めてきた一連の政策の集大成となる。中国政府は同年、大手銀行への資本注入方針を初めて打ち出した。今年の政府活動報告では、そのために3000億元の特別国債を発行する方針を示しており、今回の措置が金融システム強化に向けて以前から計画されていた幅広い取り組みの一環であることが分かる。
昨年には中国銀行と中国郵政貯蓄銀行を含む4行が、国債を財源として計690億ドルの資本注入を受けた。
規制当局は中国の6大国有銀行全てで段階的に資本を増強している。主な目的の一つは、世界的な総損失吸収力(TLAC)規制の第2段階への対応を支援することだ。これらの銀行、特に5大銀行は世界のシステム上重要な銀行に含まれ、同規制の下で追加的な資本要件を課されている。
リャオ氏によると、銀行の自己資本比率と普通株式等Tier1(CET1)比率は比較的高い水準を維持しているものの、TLACで追加的な資本バッファーが求められるため、事前の資本計画が一段と重要になっている。資本基盤を強化すれば、資産の質への圧力が続く中でも、銀行は融資を拡大するとともに潜在的な損失を吸収する余力を高められるという。
保険会社への資本注入も同様に、予防的な対応を反映している。規制当局はこれまで、長期化する低金利環境や、運用収益と負債コストの間で収益が圧迫されるリスクに直面する大手保険会社について、資本を補充する方法を検討していると説明していた。
リャオ氏は、資本注入によって保険会社の支払い能力を高め、投資・保険引受リスクへの耐性を高めると同時に、経済に振り向けられる資金の余力を拡大できるとの見方を示した。
原題:China Injects $45 Billion Into Banks, Insurers to Revive Economy(抜粋)
(第11段落以降に背景情報などを追加して更新します。更新前の記事で第7段落の用語の一部を修正済みです)
--取材協力:Charlie Zhu、Zheng Li.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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