ベッセント米財務長官はこの夏、市場への介入姿勢を強めてきたが、既に金融市場では反発が見られ、同氏の信頼性に疑問が生じている。そうした中、世界の政策当局者を相手にその手腕が試される局面がやってきた。

米ノースカロライナ州アッシュビルでの20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開幕する前、ベッセント氏は世界の主要な経済政策当局者の間で行われる議論を、成長促進という本来のテーマに立ち返らせる考えを表明した。

ただ、ベッセント氏がこのメッセージへの支持を取り付けるのは容易ではない。今年の世界経済の成長を脅かしてきた最大の要因は、トランプ米大統領らが仕掛けた対イラン戦争に伴うエネルギー価格高騰などの影響や、米国の関税政策だからだ。米国はG20のメンバーでもあるカナダとの新たな貿易戦争に乗り出しており、関税の影響が再び焦点となっている。

ドイツのクリングバイル財務相はG20会議が始まる前の声明で、関税を巡る対立やイランやウクライナでの戦争など、経済に打撃を与える紛争の終結を会議で訴える考えを示した。

クリングバイル氏は「こうしたことは全て、世界の経済発展にとって有害だ」と述べた。

ベッセント氏は、米国流の規制緩和が成長を引き出す鍵になるとみている。一方、欧州のある高官は、米国の行動によって世界が不安定化する中では、そうした措置の効果は限定的だとの見方を示した。

各国財務相の多くが強い関心を寄せているのは、ベッセント氏がこの夏に打ち出した円相場の下支えや長期金利の押し下げに向けた介入、さらにイランと取引する相手への新たな制裁措置の警告だ。

最初の二つについては、市場で多くの疑問がくすぶっている。また、対イラン制裁を巡っては、中国やインドといったG20メンバーだけでなく、欧州の金融機関も標的となる可能性がある。

「おそらく賢明でない」

イングランド銀行(英中央銀行)の金融政策委員会(MPC)メンバーを務めた資産運用者のスシル・ワドワニ氏は、ベッセント氏による説得力を欠く債券市場への介入が今後に影響を及ぼす可能性があると述べた。

ワドワニ氏は「水鉄砲で市場に立ち向かおうとするのは、おそらく賢明ではない」とし、「財務長官は、厳しい局面に備えて市場からの信頼を保っておく必要がある」と語った。

米財務省の担当者はコメントの要請に応じなかった。

ベッセント氏の下で7月下旬に為替介入が行われた後、円はドルに対する上げ幅を縮小し、8月28日には介入後初めて160円台に下落した。それでも、G20の中でベッセント氏の措置の恩恵を受けてきた日本やアルゼンチンなどにとり、同氏は重要な味方だ。

元日本銀行審議委員の木内登英野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストは、ベッセント氏は日本にとって非常に重要な存在だと指摘。円を支える米国の取り組みによって日米両政府の結び付きが強まったとの見方を示した。

一方、欧州では受け止めが異なる。米国が欧州当局者に事前に知らせることなく、ユーロ売り・円買いを行ったことへの不快感が残っている。

欧州のある当局者によると、この介入は効果的な経済戦略というより、日本への政治的な贈り物と広く捉えられた。また米国債市場については、最近の変動は債務水準やAIによる生産性向上の効果がどの程度早く生じるかを巡る疑念など、米国内の要因によって引き起こされているとの見方を示した。

G20財務相・中銀総裁会議を見守る投資家にとっては、ベッセント氏による最近の一連の措置が戦術的な対応に過ぎないのか、あるいは、より広範な戦略転換の一環なのかが重要な焦点となっている。

原題:Bessent Faces G20 Credibility Test as Interventions Fall Flat(抜粋)

(第12段落以降に情報を追加し、チャートと動画を加えて更新します)

--取材協力:Kamil Kowalcze、Alessandra Migliaccio、藤岡徹、Fran Wang、Yash Roy.

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.