(ブルームバーグ):トランプ米大統領によるイランへの経済的圧力の強化は、中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が米国に対抗する勢力として長年拡大してきた安全保障の枠組みの限界を試している。
8月31日からキルギスで始まる上海協力機構(SCO)首脳会議で、中国とロシアの首脳は、米・イスラエルによる対イラン戦争の開始以来初めて、イランのペゼシュキアン大統領と一堂に会する。インドのモディ首相や中央アジア諸国、パキスタン、ベラルーシの首脳らも出席する予定だ。
北京のシンクタンク、全球化智庫(CCG)創設者の王輝耀氏は、「新たな安全保障ブロックが形成されつつあるというメッセージは年々明確かつ強くなっている」と指摘。米国が主導する一極世界は「終わった」と同氏は述べた。
しかし、ベッセント米財務長官がイランとその支援者を罰するための「経済版Dデー」に相当する措置を警告する中、イランとトランプ氏の対決は、発足25年を迎えるSCOが足並みをそろえて行動できない実態を露呈するリスクをはらむ。同機構は近年大幅に拡大したものの、加盟国間の対立により、地政学的な野心を国際舞台での具体的な行動メカニズムへと転換できずにいる。
そのため、キルギスの首都ビシケクでの首脳会議で各国指導者らが示すのは、イランに対する象徴的な連帯にとどまる可能性が高い。習氏もプーチン氏もイランを軍事的に支援する用意を示しておらず、経済的支援も限定的だ。米国の追加制裁見通しは、欧米主導の世界秩序に挑もうとしてきたSCOを一段と難しい立場に追い込んでいる。
ユーラシア・グループの中国・北東アジア担当シニアアナリスト、ジェレミー・チャン氏は、「従来の中国のプロパガンダに沿った言葉による米国への非難が予想される」と指摘。「だが、中国政府は、加盟国の1つの安全保障を守る上でSCOがいかに機能してこなかったかに注目が集まることも避けたいだろう」と述べた。
SCOは2001年、中国とロシアが中央アジアのカザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスとともに設立した。その後、インド、パキスタン、イラン、ベラルーシが加盟。アフガニスタンとモンゴルはオブザーバー資格を持ち、サウジアラビア、トルコ、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)などさらに15カ国が「対話パートナー」となっている。
世界銀行のデータによると、SCO加盟国は世界人口の40%超、世界の国内総生産(GDP)の約4分の1を占める。
習氏にとって、SCO首脳会議は今後数週間にわたる多忙な外交日程の始まりとなる。キルギスで国賓訪問も行った後、エジプトに向かう。9月中旬にはニューデリーでモディ氏が主催するBRICS首脳会議に出席する見通しで、プーチン氏も参加を予定している。その後、習氏はトランプ氏との首脳会談が予定されるワシントンを国賓訪問する。
中国外務省の林剣報道官は26日、北京での定例記者会見で、習氏が世界の「新たな情勢」の下でSCOの協力を深化させるため、各国首脳と「踏み込んだ意見交換」を行うと述べた。中国は「ビシケクで共通認識を形成し、協力の新たな章を記す」用意があると語った。
習、プーチン両氏は首脳会議に合わせて会談する見通しだ。ロシアが4年半前にウクライナに侵攻して以来、両氏は約10回会談している。欧州による制裁発動後、ロシア経済の中国への依存は大幅に高まり、プーチン氏の戦争継続を支えている。
英国の地政学戦略助言会社ゲートハウスで中ロ関係を専門とするビタ・スピバク氏は、SCO首脳会議に対するロシア政府の最大の狙いは「ロシアとプーチン氏個人が地政学的に孤立していないことを示すことだ」と指摘。「プーチン、習両氏の関係では、最も興味深い問題は軍事・技術面での交流とエネルギー関係だ」と述べた。
インドの上級外交官、シビ・ジョージ氏は28日、モディ、プーチン両氏も会談すると明らかにした。「首脳会談では、両国関係の全分野について検討する見通しだ」と付け加えた。
原題:Trump’s Iran War Poses New Test for Xi and Putin’s Security Club(抜粋)
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