この春マンハッタンに引っ越してきたアーロン・カウフマンさん(32)は、タンパク質不足にならないよう常に気をつけている。牛肉が好きだが、最近では高くて手を出せない。「安売りしていれば、自分へのご褒美として買う」と話した。

約2年前に始まった米国の牛肉価格高騰はついに、消費者の牛肉買い控えという形で表面化した。

Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

過去にも牛肉価格が跳ね上がることはあり、消費者はそれでも牛肉を買い続けてきたが、今回は違う。

データ分析会社サーカナによると、7月中旬までの13週間の牛肉販売量は前年同期比0.3%減少。過去2年の同時期には約5%ずつ増えていた。一方、価格が安定している鶏肉の販売は2%増えた。

サーカナのクリス・デュボワ氏は「消費者に余裕がなくなっている」と語る。「食料品の価格だけではなく、生活全体のコストがのしかかり、店頭での販売量を圧迫している」と述べた。これまで消費者は外食を減らしたり、安い部位を選んだりして牛肉を買い続けてきたが、最近は購入自体を減らしたり、鶏肉など安価なタンパク源に切り替えたりしている。

牛肉価格の急騰は、中間選挙を控えるトランプ政権にとって大きな懸念事項となっている。卵や牛ひき肉、ガソリンといった生活必需品の価格は、消費者のインフレ認識に不釣り合いなほど大きな影響を与えるためだ。

動画:牛肉価格高騰と工場閉鎖について伝えるブルームバーグテレビジョン

米国で牛肉価格が高騰した背景には、牛飼育頭数の減少による供給不足がある。飼育頭数は約50年ぶりの水準に落ち込んだ。米政府はアルゼンチンなどからの輸入拡大や、メキシコからの生牛輸入再開で供給不足の緩和を図っているが、効果には限界がある。

米労働統計局(BLS)によると、7月の牛ひき肉の平均価格は1ポンド当たり7.116ドル(1キログラム当たり約2425円)と、前月から横ばいだった。小売店と消費者の両方で、値上げへの抵抗が強まっていることが示された。価格は依然として過去最高水準に近いものの、前年同月比の上昇率は9.4%と、17カ月ぶりの小幅となった。

しかし7月には独立記念日の祝日が含まれ、夏のバーベキューシーズンに販売量が弱まっていることは、特に注目に値する。

食肉卸会社スパークス・グループのマネジングディレクター、ショーン・スパークス氏は「季節的な需要は通常、牛肉価格を著しく強く支える要因だ。需要が夏のバーベキュー最盛期に弱まり始めたことは、アフォーダビリティー(価格の手頃さ)がより重要になっていることを示している」と述べた。

需要の鈍化を受け、6月下旬以降は牛肉卸売価格や性牛先物も大幅に下落した。

米農務省は致死性のラセンウジバエの寄生拡大を防ぐため、メキシコからの牛輸入禁止措置を1年以上続けていたが、今月末にかけて解除すると決定。これを受けてシカゴの先物価格は7月下旬に、昨年12月以来の安値を付けた。食肉加工大手のタイソン・フーズは先週、新たな工場閉鎖を発表し、14日の先物市場は9カ月ぶりの安値を更新した。

ミズーリ州クリントン近郊の農場で飼育されている肉牛

ファストフード企業はすでに、この傾向を指摘している。シェイクシャックのミシェル・フック最高財務責任者(CFO)は今月、投資家との電話会議で、牛肉インフレは年末にかけて「若干落ち着くだろう」と述べた。バーガーキングを傘下に置くレストラン・ブランズ・インターナショナルも、ある程度の緩和を見込んでいるとしつつ、「その多く」が顕著になるのは2027年初めになるとの見方を示した。

シェイクシャックのニューヨーク店

それでも消費者が値下がりの恩恵を受けられるのはまだ先のことだ。米国で飼育されている肉牛の頭数は依然として約50年ぶりの低水準で、メキシコから輸入する牛も食肉処理まで数カ月間育てる必要がある。

食肉加工会社プレミアム・ブランズ・ホールディングスのジョージ・パレログー最高経営責任者(CEO)は、在庫やヘッジの影響から、小売価格への反映は第3四半期末以降になると説明する。

「価格が下がれば顧客に還元する。ただ価格の上昇時に遅れがあったのと同様、下落時にも遅れは生じる」と述べた。

原題:Beef Is Finally Becoming Too Costly for American Households (1)(抜粋)

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