円安はトヨタ自動車など日本車メーカーの海外収益や輸出採算を押し上げる追い風とされてきた。日米協調介入を受けて相場の変動が激しくなる中、日本車メーカー各社の経営陣からは円安の恩恵よりも急激なボラティリティーへの備えを強調する発言が相次いでいる。

輸出待ちのホンダ車両

「本当に現場においては悩ましい」。マツダで最高資金管理・会計責任者(CTAO)を務める藤本哲也氏は4日の会見で、急激な為替変動について、こうこぼした。輸出比率の高い同社は円安の恩恵を享受してきたが、協調介入もあって為替レートが大きく変動していることから、原価低減により「為替耐性をしっかり作っていくことが非常に大事」と語った。

円安の追い風を受け通期利益計画を上方修正したトヨタとホンダからも円安を手放しで歓迎する声は聞かれなかった。トヨタの東崇徳経理本部長は4日の決算説明会で、為替は「安定的に推移することが非常に事業運営する上ではありがたい」と話した。ホンダの川口正雄最高財務責任者(CFO)は「需要のあるところで生産する」との同社の基本的な方針を改めて説明し、地域間で影響を相殺できる生産体制を構築することが「為替に対しては一番必要」と語った。

7日の外国為替市場では円は対ドルで158円台半ばに下落。協調介入の効果の減衰が早くも意識され始めている。

中東情勢やインフレに伴い原材料価格が高騰する中、円安による業績の押し上げ効果には限界も見られる。日系自動車メーカー主要7社のうち、第1四半期決算発表で通期利益計画を上方修正したのはトヨタとホンダの2社にとどまった。日産自動車、SUBARU、マツダ、三菱自動車は年間利益予想を据え置いた。

残るスズキは円安方向に前提を見直したものの、原材料価格の高騰を反映し通期見通しを下方修正した。他社も原材料価格の高騰が円安効果を打ち消す構図は共通している。例えばトヨタの場合、為替変動が前期比で7150億円の増益要因となるのに対し、資材価格の高騰や、価格転嫁受け入れを含む仕入れ先の基盤強化が1兆3250億円の減益要因となる。

金融商品を通じて為替変動リスクへの守りを固める動きもある。日産のジョージ・レオンディスCFOは日米協調介入前に為替ヘッジを行ったと述べ、「ダウンサイドがあっても身を守れると考えている」と述べた。ヘッジの詳細な手法については言及しなかった。有価証券報告書によると、日産だけでなくトヨタやホンダも為替の変動リスクを軽減するため為替予約、通貨オプション取引などのデリバティブ金融商品を活用している。

一方、スズキの石井直己副社長からは、歴史的な円安を受け将来的な生産体制のあり方を考える時期に来た可能性があるとの発言も出た。世界の供給体制について、「ある為替のレンジに入ったときには何か構造を変えるということもやっていかないといけないのではないか」と話した。

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