(ブルームバーグ):投資家保護条項(コベナンツ)付き社債の発行額が今年、早くも前年実績を上回った。銀行借り入れ以外の資金調達を模索するBBB格企業と、高い利回りを求める投資家の需要がかみ合い、市場が広がり始めている。
2026年の発行額はブルームバーグの集計によると468億円(25年は446億円)。7月末にはグリーホールディングスやいちごが発行、発行体数も9社と前年通年に並んだ。グリーHDといちごはともに日本格付研究所(JCR)の「BBB+」。同格付けの古河機械金属も現在、最大100億円のコベナンツ付き社債を準備だ。
金利ある世界が復活する中、BBB格相当企業の社債に相対的に高いスプレッド(上乗せ金利)を求める投資家と、銀行借り入れ以外の資金調達を模索する発行体のニーズが一致し始めた。コベナンツの普及は、銀行借り入れ偏重だった企業金融を社債市場へ広げ、市場の拡大を後押しする可能性がある。
野村証券の荻野和馬シニア・クレジット・アナリストは、「BBB格の企業はスプレッドが厚く、リターンを重視する年金基金などプロ投資家を中心に需要がある」と話した。コベナンツは銀行借り入れ以外の資金調達を後押しし、「社債市場への新たな発行体の参入につながり、市場の裾野拡大が期待できる」と述べた。
小さな一歩
経済産業省は25年に「企業金融の高度化に向けた社債市場の在り方に関する研究会」を設置し、26年6月にはBBB格企業などによるコベナンツ付き社債の事例を盛り込んだガイドブックを策定した。日本証券業協会は25年、社債引き受け時のガイドラインを策定し、BBB格相当の社債などでは社債権者保護が図られているかを確認するよう引受証券会社に求めた。
コベナンツには、発行体の組織再編や大株主異動の際に社債権者が期限前償還を請求できるチェンジオブコントロール条項などがある。古河機金が準備する社債でも、50%を超える議決権を保有する株主が出現した場合や、上場廃止、発行体を消滅会社とする合併などで社債権者が期限前償還を請求できる条項を盛り込んだ。
大和証券の大津大デット・キャピタルマーケット第3部担当部長は、制度整備も追い風となり、証券各社はBBB格を含む企業へのコベナンツ提案を「かなり増やしている」とし、「投資家からも、コベナンツ付き社債の方が買いやすいという声が強まっていると実感している」と話した。
グリーHDの広報担当者はブルームバーグの取材に対し、コベナンツ付き社債の発行は今回が初めてで、不確実性が高まる経済環境下、投資家保護策を講じることで投資家に安心して投資してもらうことを最優先に考えたとしている。
千葉商科大学大学院会計ファイナンス研究科大橋俊安客員教授は、コベナンツは企業の調達多様化を促す「ドライビングフォースだ」と述べた。金利の付く世界では銀行中心の企業金融にも変化が生じており、「小さな一歩だが、間接金融から直接金融への移行につながる日本の金融構造の変化を示す動きだ」と語った。
ゼロ金利時代には銀行借り入れが圧倒的に優位だった日本で、企業金融の姿が少しずつ変わり始めている。
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