米セントルイス連銀のムサレム総裁は、インフレ率が米連邦準備制度理事会(FRB)の2%目標を上回る中、生産性向上を期待して、高めのインフレを容認する余裕は政策当局にはないとの考えを示した。

ムサレム氏はブラジル・サンパウロでのイベント向けに用意した講演原稿で、「こうした状況を踏まえると、金融政策は将来の生産性向上を追求するためにやや高めの足元のインフレ率を容認するのではなく、基調的なインフレを十分に抑制することが極めて重要だ」と述べた。

セントルイス連銀のムサレム総裁

さらに、「中央銀行が長期的な経済成長に最も大きく貢献できるのは、企業が経済成長の原動力となる投資やイノベーションを計画できるような、物価が安定した環境を提供することだ」と語った。

FRBは7月28、29両日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で政策金利の据え置きを決めたが、3人の当局者は利上げを支持して反対票を投じた。また、他の当局者らは、高インフレの定着を防ぐため、近く追加利上げが必要になるリスクが高まっているとの見方を示している。

今年はFOMCで投票権を持たないムサレム氏は先週、前回のFOMCで0.25ポイントの利上げを支持する考えを示していたことを明らかにした。また、会合後に米国債が売られたことは、FRBの信認を維持することの重要性を浮き彫りにしたとの認識も示した。

生産性向上

一部のエコノミストやウォーシュFRB議長らは、AIが生産性を押し上げ、長期的にインフレ圧力を和らげる可能性を指摘している。ウォーシュ議長は7月の会合後、そうした効果が現れる時期は不確実だと記者団に述べていた。

ムサレム氏は6日、景気を抑制する金融引き締めはイノベーションを減速させ、生産性の伸びを阻害する可能性もあると指摘した。一方で、FRBのインフレ対応能力に対する国民の信頼を当然視すべきではないと述べた。

「将来の生産性向上による恩恵を理由に、目標を上回るインフレを容認する中央銀行と受け止められれば、その信頼のよりどころが損なわれる恐れがある」とした上で、「信認は、一度失われれば取り戻すのに大きな代償を伴う」と述べた。

7日には雇用統計の発表を控えるほか、来週には最新のインフレ指標が公表される予定。

供給ショック

講演後の質疑応答でムサレム氏は、供給ショックとAI主導の需要の双方がインフレを押し上げているとの見方を示した。また、インフレを巡る2つのシナリオを示し、関税の影響が薄れ原油価格が下落すればインフレ率は鈍化し始める可能性がある一方、より持続的な物価上昇圧力が定着し、インフレ率が2.5-3%あるいはそれ以上で落ち着く可能性もあると述べた。

「私の考えでは、第2のシナリオでは、そうした状況に対応するために幾分高い金利が必要になる」と語った。

ムサレム氏は、インフレ率がFRBの2%目標へ戻りつつある証拠として、月次のインフレ率が0.2%をやや下回る水準で推移するかどうかを注視すると述べた。また、インフレ期待は依然として2%目標と整合的な水準に安定しているとしつつも、インフレ期待のアンカーが外れるリスクには当局者が神経をとがらせていると語った。

原題:Fed’s Musalem Calls for Meaningful Restraint on Inflation (1)(抜粋)

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