10月に控えた東証株価指数(TOPIX)構成銘柄の史上最大の入れ替えを前に、時価総額の小さな企業で生き残りを懸けた戦いが始まる。TOPIX改革に伴う今回の見直しでは、全体の3分の1を超える600以上の銘柄が除外される見込みだ。

日本取引所グループ(JPX)が示したルールでは一定の売買代金回転率を満たした上で、浮動株時価総額の累積比率が上位97%から外れた銘柄が除外対象となる。JPXによれば、TOPIXをベンチマークとする運用資産は約160兆円。除外銘柄には指数への連動を目指すパッシブファンドなどからの売りが出て、株価の下落要因となる可能性がある。

東証アローズ

今回の入れ替えは、2022年4月の東京証券取引所の市場再編に始まった一連の改革の第2弾と呼べるものだ。第1弾では組み入れ対象を市場区分と切り離し、浮動株時価総額100億円未満の企業の段階的なウエート低減措置を実施。昨年1月末で完了し、今秋から日々の売買バロメーターである流動性指標も重視した銘柄選定を行い、対象もグロースを含めた全市場となる。

アナリストの試算では現在、銘柄選定ラインは浮動株時価総額で400億円超となっているが、市場動向により変動する。判定は8月の月間平均に基づき行われるため、今月の株価パフォーマンスが重要だ。

ニッセイ基礎研究所の森下千鶴研究員は、ボーダーラインにある企業を中心に投資家を意識した動きが出てくると予想。「保有現金に余裕があれば、自社株買いや増配などを打ち出すなど、中期的な経営戦略も含め対外的なアピールを強める動きが出る可能性はある」と言う。

投資対象としての使い勝手が悪いと国内外の市場参加者から長年指摘され続けた点を踏まえ、今回の見直しでは流動性の低い小型株を中心に構成銘柄数を少なくする。TOPIXの銘柄数は現在1600を超えており、世界の主要株価指数と比べ多さが際立つ。

JPXの山道裕己最高経営責任者(CEO)は見直しの狙いについて「TOPIXを利用するパッシブ運用者、インデックス投資家全般の利便性を改善するため」だと7月末の会見で説明した。

既に対応に乗り出した企業もある。機械商社の西華産業が5月に発表した30億円の自社株買いは、TOPIX見直しも意識したものだ。企画部の内村真基課長代理は「現時点では指数残留の圏内にいると考えているが、当落線上の各社が今後対策を打ち出す可能性もあり、様子を見守りたい」と話した。

中小型株はここ数カ月間、相対的に軟調な推移が続いている。除外候補企業が多く含まれるTOPIXスモールは4月以降で13%上昇と、大型株で構成されるTOPIX100の17%高を下回る。

みずほ証券の波多野紅美シニアクオンツアナリストは「経済面ではここまで中小型株のリスクを減らさなくてはならない局面ではなく、需給的な側面が強い」と指摘。指数除外に備えた動きが既に投資家の間で進んでいるとし、今後は候補企業の中でも残留する可能性が高まり、逆に買い戻される銘柄も出てくると予測した。

今回のTOPIX見直しでは、市場への影響を抑えるため、10月の初回判定で継続採用とならなかった銘柄について、2年間かけて段階的に外す。一方、これまで新規採用の対象外だったスタンダード市場やグロース市場の銘柄は、採用基準を満たせばTOPIXに組み入れられる。

28年10月の第2回定例入れ替え以降は、浮動株時価総額や流動性などの基準に基づき構成銘柄が毎年見直される。このため、採用基準を満たさなくなればTOPIXから除外されるリスクが常に付きまとう半面、一度除外されてもその後再び基準を満たせば復活する可能性がある。

こうした仕組みを通じて株式市場の新陳代謝を促すことも、TOPIX改革に込められた狙いの一つだ。JPXの山道CEOは「重要なのは短期的な株価対策ではなく、収益力の向上あるいは成長投資、適切な資本政策、投資家との対話を通じて持続的に企業価値を高めることだ」と述べ、上場企業に引き続き投資家目線を意識した経営の実践を求めている。

もっとも、アセットマネジメントOneの前川文彦ファンドマネジャーは、今回の見直しで中小型株は悪材料がいったん出尽くし、今後は有望な投資機会も増えると予想する。

前川氏は、見直しにじくじたる思いを抱く経営陣は比較的若い企業を中心に少なくなく、「TOPIX組み入れを経営課題として認識している企業も多い」と指摘。除外決定後も株主資本利益率(ROE)向上策やキャッシュアロケーションの見直し、配当の積み増しなどを打ち出せば、「短期的に株価が下がっても、そこが買い場になる銘柄もある」との見方を示した。

--取材協力:横山桃花、田村康剛.

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