(ブルームバーグ):大都市ニューヨークでは、嫌われ者のネズミとの遭遇は珍しい話ではない。住民3人に対して1匹の割合でネズミがいるとの推計もある。しかし少なくともある指標では、そのネズミが勢いを失いつつある。

ニューヨーク市では、新型コロナウイルス禍以降でネズミの目撃件数が最も少ない年となる見通しだ。ネズミ被害の通報や調査依頼を受け付ける非緊急窓口「311」のデータによると、ネズミの目撃件数は1-7月に前年同期比22%減少した。目撃件数は通常、夏場にピークを迎え、その後は秋から冬にかけて減少する。
目撃件数は2024年11月以降、前年同月を毎月下回っている。市衛生局はこの減少について、アダムズ前市長が2022年に「ネズミとの戦争」を宣言し、ネズミの餌を減らす取り組みを始めたことが奏功したとしている。

ニューヨーク市は25年、ウェストハーレムを含むマンハッタン第9コミュニティー地区で試験事業として、路上に設置する大型ごみ箱「エンパイア・ビン」を約1100基設置した。市衛生局のロハン第1副局長は3月の市議会委員会で、この試験事業の予算は210万ドル(約3億3000万円)だったと説明した。
同地区では25年6月以降、ごみの完全なコンテナ収集が実施されており、26年1-7月のネズミの目撃件数は前年同期比34%減少した。住民はこのごみ箱が大きな効果をもたらしたと話す。フアン・コルメナレスさんは、自宅の前だけでも「通り一面にごみが並ぶ光景」を見かけなくなったと述べ、「通りを歩き回るネズミは減った」と語った。一方で、「だからといって、建物の中の巣にいるネズミが減ったということではない」と付け加えた。
ネズミは病気を媒介し、建物などに被害を与えるほか、公衆衛生上のリスクをもたらすことが知られている。そのため、ニューヨークを含む世界各地の自治体で、その個体数の抑制が重要課題となっている。
アダムズ氏と当時のティッシュ衛生局長は22年11月、1450万ドルを投じて市内の管理が行き届いていない地域の清掃や、ごみ対策を進めた。アダムズ氏は23年にはキャスリーン・コラディ氏を「ネズミ対策責任者」に任命し、市内のネズミの個体数を恒久的に減らす任務を託した。コラディ氏は2025年9月に退任し、後任は任命されていない。
アダムズ氏のネズミ対策の柱となったのは、歩道脇に積まれたごみ袋をなくす取り組みだった。「トラッシュ・レボリューション」と名付けられたこの施策では、ごみ袋を歩道に積み上げるのではなく、ふた付きのごみ容器に入れて回収する「コンテナ収集」を段階的に義務化した。
この規則は24年3月に全ての事業者を対象に施行され、24年11月には戸建て住宅にも適用された。市衛生局によると、これらの建物から市内のごみの約70%が排出されている。
ニューヨーク市衛生局の顧問を務めるネズミ研究者のロバート・コリガン氏は、市が進めるコンテナ収集方式について、「非常に前向きに」受け止めていると述べた。同氏によると、ごみ袋を容器に入れることで、ネズミは好物であるごみに近づけなくなるという。また、ふたこそが「ネズミ対策の真の立役者だ」と指摘した。一方、この取り組みの効果を判断するには、さらにデータを蓄積する必要があるとの認識も示した。

マムダニ市長は4月、ごみ対策について、アダムズ前市長の取り組みを継続する方針を示した。その上で、31年末までに市内のごみ収集を100%コンテナ化することを表明した。
今年はネズミの目撃件数全体では減少しているものの、その傾向は全てのコミュニティー地区で一様ではない。ブルックリン第2地区では今年に入って48%減少した一方、ロウアー・イーストサイドやイーストビレッジ、チャイナタウンを含むマンハッタン第3地区では38%増加した。
ネズミ研究者のコリガン氏は全体的な減少について、市全体で進められているごみ対策に加え、ごみを適切に処分する必要性に対する市民の意識向上も背景にあるとの見方を示した。同氏は「コンテナ収集でごみを管理することと、ごみ袋をそのまま出すことでは大きな違いがあるという認識が、市民の間で広がっている」と述べた。
マンハッタン第3地区のロウアー・イーストサイドに住むアーネット・スコットさんは、ネズミの目撃件数が増えたのは建設工事が原因だとみている。工事によってネズミの巣穴がかき乱され、地上に出てくるためだという。また、ごみ処理の改善だけでは増え続けるネズミの個体数を抑えるには不十分だとの見方も示した。「ネズミは餌を見つける方法を知っている。特に1階にレストランが入っている建物ではそうだ」と語った。
原題:NYC Rat Sightings Drop 22% as City Advances in Battle With Pests(抜粋)
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