(ブルームバーグ):日本と米国による歴史的な協調為替介入を受け、市場の関心はドル・円相場が155円を明確に下抜けるかどうかに移っている。ストラテジストらは、この水準を円高の持続性を占う重要な節目とみている。
155円は単なるテクニカル要因以上の意味を持ち始めている。ドル・円は日本当局が今年4月と5月に実施した円買い介入で一時155円近辺まで下落したものの、その後は再び上昇基調に戻った。このため市場では、介入は時間を稼ぐことはできても、円安の大きな流れを変えることはできないとの見方が強まった。
日米が数十年ぶりとも言える緊密な協調体制を築いている今回は、155円を明確に割り込むかどうかが一段と重要になっている。1998年以来となる日米協調の円買い介入を受け、円相場は約40年ぶり安値圏の164円近辺から一時5%程度反発した。日米両政府は必要に応じて追加の協調介入を実施する用意があることも示唆している。
「当局は今回、本気で155円という重要な水準を突破しようとしている」と、BofA証券の山田修輔為替金利ストラテジストはブルームバーグテレビジョンとのインタビューで指摘。それができなければ「市場は当局が政策手段を使い果たしたと受け止めるだろう」と述べた。
山田氏によると、ドル・円が155円を持続的に下回れば、市場の需給構造そのものが変わり得る。これまでドルを支えてきた買い需要が一巡する一方、日本の輸出企業や他の投資家によるドル売りが増える可能性があるためだ。同氏はリポートで、その場合、ドル・円は押し目買いから戻り売りへと市場の力学が変化すると予想した。
その動きは投資家のポジション動向によってさらに増幅される可能性がある。米商品先物取引委員会(CFTC)の最新データによると、アセットマネジャーとレバレッジドファンドによる円の売り越しポジションは2024年以来の高水準に積み上がっている。
ウェルズ・ファーゴのストラテジスト、チドゥ・ナラヤナン氏は、「155円を突破すればショートスクイーズ(踏み上げ)が加速するリスクが高まる」とみる。「ポジションの一部が解消されるだけでも円買い需要は大きく膨らむ可能性がある」とし、「ドル・円には152円近辺まで一段と調整する余地が生まれる」と述べた。
もっとも、ウォール街では円高が続くことに懐疑的な見方も多い。今後数カ月以内に米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを実施すれば、ドルの金利面での優位性が改めて意識されるためだ。
シティグループのダニエル・トボン氏らストラテジストは、円高は一時的なものにとどまるとみている。当局の円買い介入が終われば投資家は再び円を調達通貨として利用するようになるとして、ドル・円は当面156-161円程度のレンジで推移すると予想している。
市場の資金フローにも介入を受けた円高の勢いが早くも鈍り始めた兆しが表れている。シティのリニアG10FXトレーディンググローバル責任者兼欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域FX責任者のジェリー・ミニアー氏は、ここ数日でドル・円を買う動きが強まっていると指摘。「介入を見込んでポジションを構築していたレバレッジドファンドの多くが、足元の水準で利益確定を進めている」と説明した。
ラボバンクの為替戦略責任者、ジェーン・フォーリー氏は、円がさらに買われるかどうかは、日本の政策運営全体が変化しつつあると投資家を納得させられるかにかかっているとみる。
「当面は追加介入への警戒感とドル安が、ドル・円の一段高を抑えるには十分だろう」とフォーリー氏は指摘。その上で、「円相場が本格的に回復するには、市場が日本銀行は利上げペースを加速できると確信するとともに、政府が財政規律を重視するとの信認を一段と高める必要がある」との見方を示した。
--取材協力:グラス美亜、David Finnerty.
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