株式市場ではローテーションが続く
7月28日の米国株式市場では、原油価格の下落が続く中、4-6月期の決算動向も良好という評価もあり、AI・半導体関連株の一極集中の修正が進んだ。
ダウ平均がまとまった幅で上昇した一方、ナスダック指数は5日続落、SOX指数も4日続落となった。株式市場の中でのローテーションが生じているため、株式市場全体は堅調である(AI・半導体関連株の弱さは問題にならない)という見方が多い。
筆者も概ね同じ見方であり、株式市場の最大のリスクはインフレ懸念や利上げ観測が大きく後退し、景気悪化懸念とともに債券を買い戻す動きが生じるかどうかであるとみている。現在は株式市場の中での投資資金の偏在が議論されているが、偏在の度合いが大きいのは債券と株式というアセット間の動きだろう。
なお、株式市場の中でのローテーションを楽観視できない面もある。
それは、今年前半(特にイラン情勢の悪化以降)にAI・半導体関連株が選好されていた理由が、逃避的(リスク回避的)な面があったとみられるからである。トランプ政権の不確実性の高さを含め、インフレ懸念や景気悪化懸念など先行きの不透明感が強まる中で、AI・半導体関連株が安全資産とみなされて選好されていたと考えられる。他方、足元のローテーションは、イラン情勢の改善に期待した動きと言え、ある程度のポジション調整が進んだ後は、景気や消費に強気になれるかどうかという判断が重要になる。
すなわち、今年前半のAI・半導体関連株のラリーは、「逃避的に買われる相場」で、今年後半に同じような傾向が生じる可能性は高くない。株式市場全体は横ばい圏の動きになるだろうと、筆者は予想している。
FOMCは市場予想比ではハト派の公算
7月28日の米国債券市場では、原油価格の下落によってインフレ懸念が後退する中、金利が低下した。
長期金利は前日比▲4.2bp、2年金利は▲4.3bpだった。7月FOMCを前に、利上げ観測が後退した。FF金利先物市場では、7月28-29日のFOMCにおける利上げ確率が31.5%となっている。前日の37.9%からは低下したが、一定の警戒感が残っている。ウォーシュ議長はフォワード・ガイダンスを否定していることから、毎回のFOMCがライブであるという見方が広がっているのだろう。
筆者は利上げが実施される可能性はかなり低いとみており、FOMCはややハト派的な結果となると予想している。もっとも、30%強の織り込みであれば、利上げがなくてもそれほどサプライズという評価にはならないだろう。9月利上げの可能性も残り、市場の変動は限定的になる公算である。
なお、筆者がハト派的な結果を予想している背景については、インフレ予想(BEI)の弱さである。この日も10年BEIは前日差▲0.7bpとなった。水準は2.20%で、これはコロナ後のレンジ下限に近い。長期のインフレ予想については、下振れリスクを警戒すべき状況になっている。
意見は消費減税「反対」、決断は「反対しない」という麻生氏の距離感
食料品の消費税率を27年4月から2年間限定で1%とする案について、政府・与党は実施する方針を固めたと報じられている。
自民党には反対意見が根強いとされる中、各種報道によると高市首相が党役員会で「決断するときは決断をする」と述べたという。役員会後には麻生副総裁、鈴木幹事長と会談したことも報じられているが、読売新聞は麻生氏が「(決断前の首相の)意見であれば反対だが、首相として決めたのであれば反対はしない」と応じたとした。
自民党で反対意見が多かったとしても、麻生氏が反対しないということであれば、消費税率の引き下げが決まる可能性が高い。市場の反応次第では撤回される可能性もあるが、消費税率が引き下げられる可能性が非常に高いと考えて良いだろう。
また、麻生氏の発言は今後の政局を読む上でも非常に重要だと考えられる。
高市首相は消費減税の議論が終わった後、8~9月にかけて内閣改造・自民党役員人事を検討しているとみられている。キングメーカーとなっている麻生氏との関係が良好だとすれば、麻生派に所属し、麻生氏の義弟である鈴木幹事長が留任となる可能性が高い。一部では、高市首相は麻生氏と決裂して武田元総務相が幹事長に起用され、自民党が割れる(年内解散もあり得る)というリスクシナリオを指摘する見方もあったようだが、その可能性はほとんどなさそうである。
一方、麻生氏は消費税率の引き下げには反対の立場であることも示唆した。金利上昇や円安圧力が懸念される中、リスクは高市首相が負うべきだという考えがあるのだろう。
財政リスクが顕在化した場合、高市首相はその責任を負わされて退陣に追い込まれるという見方もある。麻生氏の発言からは、高市政権を全力でサポートしていくという姿勢は感じられなかった。高市首相にとって、低下傾向が目立つ内閣支持率の回復と求心力の回復が課題となるだろう。
今後を展望すると、消費税率の引き下げを成功させるため、高市政権は財政リスクを高めるような(不用意な)発言は控えられるだろう。消費税率の引き下げが決まる前後では財政リスクの高まりが指摘される可能性はあるが(短期警戒)、中長期的にはリスクが低下していく方向だろうと、筆者は予想している。
なお、支持率の回復が必要ということであれば、日銀に対するけん制(利上げに対する慎重な姿勢)は続く可能性が高い。円安圧力に対しては為替介入で対応していくだろうと、筆者は予想している(片山財務相は内閣改造後も留任するだろう)。
(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)