米テクノロジー大手と投資家の間には長年、暗黙の了解があった。AIへの巨額投資を続けても、売上高が伸びている限り、株式市場はそれを評価するというものだ。しかし、その前提は崩れ始めている。

アルファベットは2026年の設備投資計画を最大2050億ドル(約33兆5900億円)へ引き上げ、第2四半期のフリーキャッシュフロー(FCF)が2004年の上場以来初めてマイナスとなったことを明らかにした。これを受けて23日の株価は7%以上急落し、約1年ぶりの大幅安を記録した。

同社のクラウド事業は売上高が市場予想を大きく上回る82%増だったが、投資家の関心は巨額の設備投資に向かった。

ボールド・ウェルス・パートナーズの最高投資責任者ジェイソン・ルミア氏は「投資家の関心は設備投資に集中している。執着していると言ってもいい。以前は多ければ多いほど良かったが、今は少なければ少ないほど良いという考えになっている」と述べた。「増資やマイナスのキャッシュフロー、債務の増加が見られる。それらはすべてリスクを高める要因だ」と続けた。

今回の株価急落は、AIと「マグニフィセント・セブン」を巡る市場の見方に、変化が生じたことを示す。ジェミニや自社製AIチップ、クラウド事業を抱え、AI勝ち組の代表格とされるアルファベットですら、設備投資拡大が株価の重荷となった。

こうした流れの中、今週は29日にマイクロソフトとメタ・プラットフォームズ、30日にアップルとアマゾン・ドット・コムが決算を発表する。

エヌビディアやテスラを含むマグニフィセント・セブン指数は、アルファベットの決算発表後に4.8%下落し、年初からは3.7%安となっている。一方で、AI投資の恩恵を受けるマイクロン・テクノロジーやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)など半導体メーカーに、市場の関心は移りつつある。

ニューヨークのオフィスビルに設置されたマイクロソフトの屋外広告

マイクロソフトは今年21%下落し、メタも9.8%安、アマゾンはほぼ横ばいとなっている。ブルームバーグが集計したアナリスト調査では、アルファベットとマイクロソフト、アマゾン、メタ4社は今年約7240億ドル、2027年には約9500億ドルを設備投資に投じる見通しだ。

ベンチャーキャピタルのネオステラー・キャピタルのプリンシパル、ウィリー・リー氏は「現在は設備投資を理由に売られやすい局面にある。マイクロソフトとメタ、アマゾンはいずれもアルファベットと足並みをそろえて、支出を拡大している」と述べた。「今後も支出を続ける中で、事業のあらゆる部分が厳しく精査されることになるだろう」と続けた。

不透明感は半導体株にも広がっている。フィラデルフィア半導体株指数は今年上期に101%上昇したが、7月に入ってからは17%の下落。過去100日のボラティリティー(変動率)も2020年以来の高水準となっている。

ボールド・ウェルスのルミア氏は「いずれAIの冬が訪れるだろう」と語る。「利益率がいかに突出しているか、とりわけメモリー分野を見れば、それを長期間維持することは不可能だ。いずれ利益率の低下とバリュエーションの縮小が起こり、市場に極めて影響を及ぼすだろう」と述べた。

一方、アップルは巨額のAI投資を避け、外部のAIモデル開発企業との提携戦略を採用している。株価は7月に15%上昇し、年初来では23%高となった。ただ、AI向けメモリー需要の増加でパソコン「MacBook」やタブレット端末「iPad」の値上げを迫られており、利益率への影響は不透明だ。

大型テック株の下落でマイクロソフトやメタの株価収益率(PER)は低下し、過去平均を下回った。しかしAI投資競争は事業モデルを変え、新たなリスクも生んでいる。アルファベットのキャッシュフロー悪化は、投資家に衝撃を与えた。

こうした状況により、昔ながらのバリュエーションは以前ほど意味を持たなくなったと、野村アセット・マネジメントのシニア・ポートフォリオ・マネジャー、ブラッド・ウォーデン氏は指摘する。同氏が運用するファンドはエヌビディアやアルファベット、マイクロソフト、アマゾンの株式を保有する。

ウォーデン氏は「今は割安に見えても、将来起こり得る破壊的変化を考えれば、無実が証明されるまでは有罪ということになる。現在のビジネスモデルは持続可能なのか、採算性は悪化するのかという疑問がある」と述べた。同氏はAIに積極投資する企業が最終的には投資リターンを得ると予想しているが「結局のところ、投資サイクルの中でどれだけの苦痛に耐えられるか、そしてサイクルの終わりに経済的な成果を得られるとどれほど強く信じているかにかかっている」と話した。

原題:Big Tech Earnings Slam Into a Market in Revolt Over AI Spending(抜粋)

--取材協力:Matt Turner.

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