(ブルームバーグ):AI相場の持続を信じる日本株投資家の間で電線株への注目が再び高まってきた。関連するインフラ投資の長期的な拡大シナリオは揺るぎなく、不安定さを増す半導体関連株の代替投資先を探し始めているためだ。
フジクラや古河電気工業などの電線株はAIの普及によるデータセンター向け光ファイバー需要の拡大が期待され、昨年後半から徐々に人気化。株価は急騰前の数倍になるなど大化けしたが、過熱感の高まりで5月を高値に調整局面が続いている。
ただ、市場では大規模なクラウドサービスを構築・運用するアルファベットやアマゾン・ドット・コム、マイクロソフトなど米国のハイパースケーラー各社の決算でデータセンター需要の拡大傾向を確認するとの期待感が根強い。加えて、最近の株価調整で電線株のバリュエーションは割安になったとの見方も浮上している。
しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーは、ハイパースケーラーの決算を機に収益化への道筋が見えたら、電線株は「また持ち直す」と予測。フジクラのバリュエーションを例に挙げ、AI市場の広がりを考えれば十分許容できる水準と分析した。フジクラの12カ月先株価収益率(PER)は約30倍と、60日平均の39倍を下回る。
電線株に対する関心の高まりは、日本株市場におけるAI相場への期待感の強さと循環的に投資先を探そうとする投資家の姿勢を表す。AI関連銘柄の影響力が大きい日経平均株価は先週、高値からの下落率が10%を超え、テクニカル分析面で調整局面入りしたが、今週は下値を買う動きも出ている。
伊藤忠総研の武内浩二マクロ経済センター長は、AI相場の「バランスが少し変わり、裾野が広がっている」と指摘。トヨタ自動車やソフトバンクグループを抜き、日本株の時価総額で一時トップとなったキオクシアホールディングスなど最近までは半導体関連銘柄への集中が目立ったが、ここへきて市場参加者は電線など出遅れていた銘柄を含む新たな投資先を探していると言う。
BofA証券の圷正嗣ストラテジストも英文リポートで、電線株はメモリーや半導体製造装置など過度なバリュエーションとなっているセクターと比べ、相対的に投資魅力が大きいとみている。実際の成長見通しより市場での評価が先行している銘柄は慎重に選別すべきだが、データセンター投資の拡大で数量増の恩恵を受ける有望セクターとして光ファイバー関連株を挙げる。
投資人気が再燃するタイミングとして、今週から8月上旬にかけ相次ぐハイパースケーラー各社や米コーニングなどの光ファイバー競合、国内電線各社の決算発表がターニングポイントとなりそうだ。伊藤忠総研の武内氏は、ハイパースケーラーの決算が日本の電線株の上昇を後押しする可能性があり、データセンターやAIサーバーへの投資拡大が確認できれば、追い風になると読む。
ブルームバーグのデータによると、フジクラの主要顧客にはアップルが含まれる。また、米コーニングと長年提携関係にあり、コーニングの顧客にはメタ・プラットフォームズやマイクロソフト、エヌビディアなどが名を連ねている。
一方、今年1-4月に株価が2倍となり、日経平均構成銘柄の上昇率上位だったフジクラが急反落したのは5月下旬に市場予想を下回る決算を発表したのがきっかけだった。その後6月に今期(2027年3月期)業績計画を上方修正し、収益に対する悲観的な見方は和らいでいる。同社は8月7日、競合の古河電工は同6日、住友電気工業は7月31日に第1四半期(4-6月)決算を発表予定だ。
もっとも、英ペラム・スミザーズでアナリストを務めるウィリアム・ネストゥク氏は、需要拡大に生産能力が追いつかないとの懸念が電線株の復調を妨げる可能性があると警戒する。
フジクラが5月に公表した新たな中期経営計画は株式市場から期待値に届かなかったと受け止められ、同社の岡田直樹社長は6月のブルームバーグとのインタビューで今期業績計画の下振れはないと言明した半面、光ファイバーの増産余地は限られるとの認識を示している。
ネストゥク氏は最大の問題は生産能力で、需要にどう対応していくか「決算説明会を聞くまでは分からない」と指摘。半面、日本の電線メーカーはフェアバリューを下回る水準で取引されており、フジクラと古河電工、住友電工、SWCCの4社の株価には少なくとも20%の上昇余地があるともみている。
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