(ブルームバーグ):片山さつき財務相は10日の閣議後会見で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの年金基金による日本の金融資産投資を後押しする考えを示した。発言を受け、市場はトリプル高で反応した。
片山氏は、高市早苗首相のもとで日本経済が成長型に移行し、株式市場が「このところも非常に堅調に動いている」と指摘。その上で「GPIFをはじめとする年金基金に、日本の金融資産にさらに投資してもらう方向で後押しする方策を追求したいと考えている」と表明した。
「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の中で示された成長投資は財政負担を伴うため、その成果を金融面でどのように国民が享受できるのかとの質問に対する回答だった。

事情に詳しい関係者は、GPIFに関連した片山氏の発言は、事前に用意されていたものだとした上で、口先介入的な効果を狙ったものかどうかは分からないと語った。
片山氏の発言後、円は対ドルで上げ幅を拡大し、一時161円29銭まで上昇した。発言前は162円40銭付近で推移していた。債券市場では新発10年債利回りが前日比10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い2.775%に低下。日経平均株価は一時6万9300円台と、前日比で2%超上昇した。
大和証券投資情報部の坪井裕豪チーフストラテジストは電話取材で、GPIFの運用に言及していることは、GPIFが日本資産への投資比率を増やすのではと推測されると指摘。物価高や金利上昇、円安とマーケットの不安を和らげる発言で、債券・為替・株式が買われるトリプル高の相場が続く可能性があるとの見方を示した。
GPIFは、国内外の債券と株式に25%ずつ等分に投資している。GPIFは日々の運用で、それぞれの資産ができるだけ25%から離れないようにリバランスしているが、一定程度のかい離は認められている。

例えば国内株式と国内債券はいずれも上下6%の幅を認めており、最大で31%まで比率を高めることもできる。
ただ、GPIFの運用は被保険者の利益のために行うのが前提で、政策的な介入は認められない立て付けだ。片山氏は「GPIFについては私だけでできることではないが、政府内でも意思統一をして話をしていきたい」と述べた。
ステート・ストリート銀行金融市場部の貝田和重部長は、そもそもGPIFは厚生労働省の所管だとした上で、「GPIFが投資戦略を変更するにはそれなりに踏むべき手順があり、片山氏が指示する立場にない」と指摘。「市場はヘッドラインに反応しているが、マクロの状況には変わりはなく、円高が長く続くとは考えにくい」と語った。
GPIFの広報担当者は、片山氏の発言についてコメントは差し控えるとした。
政府・与党の間では、GPIFへの関心が高まりつつある。ブルームバーグが入手した、高市政権の新たな金融戦略案でも、GPIFのオルタナティブ投資の見直しについて触れている。
未公開株や不動産などへの投資は資産全体の5%を上限としているが、「新たな上限水準、配分割合を含め、今後のポートフォリオの位置付け・在り方を検討する」と踏み込んだ。
GPIFの直近の運用資産額は26年3月末時点で293兆6437億円。25年度の運用収益は41兆3995億円と23年度に次ぐ過去2番目の高水準だった。
ステート・ストリート銀行の若林徳広東京支店長は、GPIFの資産配分が変われば、他の年金基金も追随する可能性があり、市場全体への影響は極めて大きくなり得ると指摘。追加の具体的なコミットメントが必要だが、これは政府による長期的な戦略の第一歩となる可能性があり、市場の見方を大きく変えるかもしれないと語った。

片山氏の他の発言
- 金融政策の具体的な手法は日銀に委ねられるべきだ
- 金利の具体的水準については申し上げない
- 財政の持続可能性を確保し、市場の信認を得ていく
- 積極財政の下では巡航的に金利上がることを想定
- 債務対GDP比を引き下げていくという約束を実現する
(4段落目に関係者のコメントを追加して更新しました)
--取材協力:我妻綾、堤健太郎、横山桃花、グラス美亜、佐野日出之.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.