(ブルームバーグ):片山さつき財務・金融相が10日の閣議後会見で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの年金基金による日本の金融資産投資を後押しする考えを示したことを受け、ストラテジストやファンドマネジャーらは日本の資産に買いが入るための追い風になるとみている。
同日の日本市場では、片山氏の発言後に債券、円、株式を買うトリプル高の様相が強まり、金利は大きく低下し、円は対ドルで1円以上上昇。日経平均株価の上げ幅は一時1600円を超えた。円安や金利高騰の悪影響が市場で警戒されていただけに、政府が市場との対話で新たなアプローチを取り入れ始めたとの見方も出ている。市場関係者の主な見解は以下の通り。
ロベコのアジア・ソブリンストラテジスト、フィリップ・マクニコラス氏
- 円や日本の資産全般にとって好材料で、超長期債に対する売り圧力を抑制することになるだろう
- GPIFは新発債の多くを吸収しているが、これにより外国人投資家への依存度が低下し、期間10年以上のイールドカーブ(利回り曲線)がさらに下支えされる可能性が高く、フラット(平たん)化が進むとみられる
クレディ・アグリコルCIBのシニアストラテジスト、デービッド・フォレスター氏
- 片山氏は為替介入の可能性を強調するのではなく、円安の構造的な問題に対処することで円相場を支えるというこれまでとは異なるアプローチを取っているようだ
- 背景には金融緩和路線の維持、財政の持続可能性への懸念などによるイールドカーブのスティープ(傾斜)化、日本の経常黒字が海外資産に再投資されている実態がある
- そこで片山氏は日本銀行の独立性を強調し、高市早苗首相が財政の持続可能性を重視していることも指摘、GPIFが国内資産への資金配分をさらに増やす可能性を示唆した
- 投資家が円安に対する見方を逆転させるには、言葉だけでなく、実際の行動が求められる
- 日銀がより積極的に利上げを行うか、政府が財政赤字を抑制するか歳出の財源として債務以外の代替手段を見いだすか、GPIFが実際に資産配分を変更するかだ
三菱UFJアセットマネジメントの小口正之エグゼクティブ・ファンドマネジャー
- 金利上昇という大きな流れを変える材料ではないが、上昇スピードを緩める要因にはなるだろう
- 為替市場での介入と同じで、効果は一時的かもしれない
- 長期金利の3%は絶対的な意味のある水準ではなく通過点で、金利は今後も上昇を続けるだろう
ステート・ストリート銀行の若林徳広東京支店長
- ポートフォリオの配分が少しでも変化すれば、大きな影響が及ぶだろう
- 政府による非常に長期的な戦略の一歩となる可能性があり、市場のナラティブ(物語)を根本から変えるかもしれない
- GPIFだけでなく、他の年金基金も追随することになり、実際に日本へ流入する資金や他者が追随する波及効果もあるが、これはあすすぐに起こるものではない
- 投機筋がもしもそうなったらと仮定して動いたものと捉えるべきで、ドル・円の動きは一過性で、さらに円買いが持続するには確固たる裏付けが必要
インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジスト
- 片山氏の発言はサプライズで、円売りポジションを持つ海外勢に不安を植え付ける効果があるだろう
- GPIFの資産配分は中長期的に決められているが、レンジ内では裁量で運用でき、今後国内債券・株式の割合を高めたとの推測が広がれば、かなり円高に振れるだろう
- ドル・円が動くからという理由で、将来の国民が受け取る年金の在り方を変えていいのか議論はあるが、そこまで言わざる得ないところまで政府が追い込まれた
- ただ、実際にGPIFなどの年金基金の運用方針が変わるのか、どのような権限で政府が促すのかは不透明
三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジスト
- 仮にGPIFなどが外国株と外債の割合を減らして国内資産への投資を増やすなら、円安圧力が低下する
- 金利低下、株高という思惑になりやすく、円高、株高、債券高が進んだのは最初の反応としては違和感がない
- GPIFが動けば他の年金基金にも影響するだろうが、詳細はまだ分からず、仮に市場の思惑とは違う内容なら反動が出る可能性
三井住友銀行市場営業部の納谷巧為替トレーディンググループ長
- 円ショートが積み上がっているので、具体的に動き出せばポジション解消につながり円が大きく戻す可能性がある
- 投機筋の円ショートがたまっていたので、発言のタイミングが良かった
- GPIFが今後、具体的に動き出すかどうかに注目
外為どっとコム総合研究所の中村勉為替アナリスト
- 日本の財政悪化を過度に懸念して円を売っていた海外勢が買い戻した
- GPIFの運用資産額は大きいため、反応せざるを得ない
- ただ、実際にGPIFがどれだけ投資できるのかは不透明で、中東情勢の不確実性も残る
--取材協力:日高正裕、堤健太郎、Matthew Burgess、佐野日出之、我妻綾.
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.