米社債市場は、高格付けのテック企業の起債が増え、安全性が増したように見える。しかし、それが幻想ではないかと不安視する投資家も多い。

アマゾン・ドット・コムやメタ・プラットフォームズ、アルファベットなど今年に入り最も大型の起債を行った企業の幾つかは、AA格付けが付与されている。こうした企業の社債発行が増えた結果、ブルームバーグの米国投資適格債指数の平均格付けは事実上高くなった。バークレイズの6月末時点の分析によると、同指数に占めるAAおよびA格付け債の割合は52%と、2021年の約46%から増えた。

BBB格付け債の比率は逆に21年の46%から41%に低下した。高格付け債のリスクプレミアムが今年に入り、比較的引き締まって推移する理由の一つと言える。ハイグレード債のリスクプレミアムは7月1日時点で0.74ポイントと数十年ぶり低水準に近い水準まで縮小した。

だがその一方で、人工知能(AI)インフラ整備を賄う目的で発行される社債に今後数年で投じられる数兆ドルの資金が、予想ほど投資利益を生まず、現時点で堅実に見える企業でさえ失敗するリスクが高まりつつある。

実際にそうなれば、社債のパフォーマンスは他の債券を下回り、スプレッド(上乗せ利回り)が拡大すると予想される。社債保有者には米国債に対し評価損が生じ、企業の借り入れコストが押し上げられる恐れがある。

ハイライン・アセット・マネジメントの債券マネジングディレクターで、フェッドウオッチ・アドバイザーズの創設者ベン・エモンズ氏は「AI関連のクレジットでバブルが突然崩壊すれば、投資適格債市場により広く波及し、スプレッドを拡大させ、投資家は集中リスクにさらされるだろう」と警告した。

「借り入れに依存するAIブームが、システミックなクレジットイベント(信用事由)に変貌するテールリスク(確率は低いが発生すれば甚大な損失をもたらすリスク)を市場は十分織り込んでおらず、現在の価格設定からそれがうかがえる」と同氏は分析した。

バンク・オブ・アメリカ(BofA)の先週のリポートによれば、各種通貨建てのAI関連社債の発行額は今年に入り約2200億ドル(約35兆5000億円)に達し、25年通年の発行額から62%増加した。巨大データセンターで高度な計算能力を構築し、クラウドサービスやAI向けインフラを提供するハイパースケーラー、アマゾン、メタ、アルファベット3社とオラクルのドル建て債の発行額が約1070億ドルを占めた。

AI半導体で圧倒的シェアを占める米エヌビディア とイーロン・マスク氏率いるスペースXがそれぞれ250億ドル相当を起債した6月は、ハイグレード債の発行額が月間ベースで過去最高を記録した。

原題:AI Debt Deluge Makes Credit Market Look Safer While Masking Risk(抜粋)

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